研究課題/領域番号 |
15K00838
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研究機関 | 高崎健康福祉大学 |
研究代表者 |
曽根 保子 高崎健康福祉大学, 健康福祉学部, 准教授 (80452027)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ビタミンC / 小胞体 / レドックス |
研究実績の概要 |
平成29年度は、タンパク質の品質管理機構におけるビタミンCの影響について検討するため、予め細胞内にビタミンCを一定量取り込ませたヒト肝がん由来細胞であるHepG2に対し、小胞体ストレスを人為的に惹起させ、タンパク質の品質管理と密接に関係する小胞体ストレス応答のセンサー因子、及び、タンパク質分解過程に関連する因子、タンパク質の立体構造の形成に関連する因子のそれぞれの発現変化を検討した。 小胞体ストレスの発症機序が異なる複数の薬剤により小胞体ストレスを誘導したところ、いずれの薬剤においても小胞体ストレス応答の重要なセンサー因子であるBip,XBP1,CHOPの発現上昇が認められた。これに対し、ビタミンCを取り込ませた細胞では、小胞体ストレスを誘導した際に、一部の小胞体ストレス応答センサー因子の遺伝子発現が抑制される傾向が認められた。これらの変化は小胞体ストレスの発症機序により大きく異なった。同様に、タンパク質分解過程に関与する因子としてEDEM1、EDEM2、EDEM3の発現変化を解析したところ、EDEM1、EDEM3には大きな変化が認められなかったが、EDEM2についてはビタミンCを取り込ませた細胞において、小胞体ストレス誘導後、遺伝子の発現が抑制された。 タンパク質の立体構造の形成に関連する因子については、現在のところ大きな変化を見つけられなかった。 これらのことから、ビタミンCはタンパク質の品質管理機構に関与している可能性が示唆された。今後は、ビタミンCが小胞体ストレスの発症機序のどの過程に関与するかについて検証が必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成29度は、小胞体ストレスの発症機序が異なる複数の薬剤により小胞体ストレスを誘導し、小胞体ストレス応答のセンサー因子、タンパク質分解過程に関与する因子、タンパク質の立体構造の形成に関連する因子の遺伝子発現を中心に解析したが、小胞体ストレスの誘導後の時間や小胞体ストレスの発症機機序により、ビタミン Cの影響が大きく異なることから、これらの再現性の確認等に時間を要した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、タンパク質の品質管理機構におけるビタミンCの影響について検討するため、小胞体ストレス応答のセンサー因子、タンパク質分解過程に関与する因子、タンパク質の立体構造の形成に関連する因子の遺伝子発現を中心に解析しているが、実際の細胞で実質的にはたらくタンパク質レベルの検証を行う必要がある。また、細胞内では上述の因子の局在が大きく変動し、これらの変化によりタンパク質の品質管理を行っていることが示唆されている。したがって、今後は、タンパク質レベルで、ビタミンCが上述の因子のどのような影響を及ぼすかを検討したい。また、ビタミンCを取り込ませた細胞内で、上述因子の局在がどのように変化するかを評価する予定である。
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