タンパク質の正しい立体構造の構築には、小胞体内外におけるレドックス環境が非常に重要であり、細胞内では、タンパク質の正常な立体構成に有利なレドックス環境が厳密に制御されていることが報告されている。これに対し、体内の抗酸化物質であるビタミンCは、生体内で種々のレドックス反応に密接に関与しているが、タンパク質の立体構造の調節機構や小胞体ストレス応答時におけるビタミンCの影響は十分に明らかとなっていない。 そこで、小胞体ストレス応答時におけるビタミンCの影響について検討するため、予め細胞内にビタミンCを一定量取り込ませたヒト肝がん由来細胞に対し、小胞体ストレス誘導剤を添加することにより、小胞体ストレスを人為的に惹起させ、小胞体ストレス応答時におけるビタミンCの影響を解析した。また、併せて細胞内のビタミンCの量の変化も測定した。 その結果、ビタミンCをほとんど含まない細胞では、小胞体ストレス誘導時に小胞体ストレス応答因子の一部の遺伝子発現が誘導されたのに対し、ビタミンCを取り込ませた細胞においては、特定の小胞体ストレス応答因子の遺伝子発現が抑制される傾向が認められた。また、小胞体ストレスにおけるタンパク質分解に関わる因子の遺伝子発現変動も認められ、ビタミンCが小胞体ストレス時におけるタンパク質分解の過程にも何らかのかたちで関与している可能性が認められた。しかしながら、その詳細なメカニズムについては更なる検討が必要である。
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