疾患モデル(瞬き減少型ラットドライアイモデル)において1)系において栄養制限(絶食、間歇絶食)を行うことにより内因性のケトン体(3-ヒドロキシ酪酸)を上昇させる処置と、2)3-ヒドロキシ酪酸を人為的に栄養制限相当量を投与した場合に変動する、角膜/涙腺機能の形態学的、生化学的指標より、1)と2)に共通の項目を選別し、栄養制限におけるケトン体の果たす役割の解明を目指す。平成29年度は、平成27-28年度に実施した正常動物における間歇絶食、3-ヒドロキシ酪酸投与における3-ヒドロキシ酪酸の血中、涙腺、涙液中濃度動態をもとに、ドライアイモデルラットにおける1)栄養制限としての間歇絶食と2)3-ヒドロキシ酪酸を、間歇絶食相当量を全身投与した場合の涙液産生能、角膜/涙腺機能の変化の検証に続き、標的臓器におけるケトン体代謝、酸化ストレス耐性等を詳細に検討を行った。その結果、1)2)ともに、間歇絶食、3-ヒドロキシ酪酸投与により、ドライアイ誘発処置により、ドライアイの主徴である涙液減少の抑制、角膜障害の軽減とともに、標的臓器である涙腺、角膜において、酸化ストレス耐性を促す転写因子(Nrf2-keap1)の核内移行の誘導と、その誘導因子としての3-ヒドロキシ酪酸がエネルギー代謝の過程で産生する代謝産物であるフマル酸の増加が確認された。以上の事象より、ドライアイの介入処置としての栄養制限が有用性である可能性が示唆された。さらに、その作用機序として、栄養制限時に増加するケトン体(3-ヒドロキシ酪酸)の代謝過程で産生されるフマル酸によるNrf2-keap1誘導が、酸化ストレス耐性の獲得を促しドライアイの主徴を軽減させたものと推察された。
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