グルコサミンが炎症抑制作用を発揮するための分子メカニズムについて、ヒト滑膜細胞株MH7Aを用いて検討している。そして、昨年度までの研究で、グルコサミンが炎症反応に重要な役割を果たすNF-κBのp65サブユニットをO-N-アセチルグルコサミン(O-GlcNAc)修飾することで、NF-κBの核移行や活性化(リン酸化)を抑制することを明らかにした。またグルコサミンは、NF-κBの阻害タンパク質であるIκBαの分解をO-GlcNAc修飾依存的に抑制し、NF-κBとのinteraction量を増やすことで、NF-κBの機能を抑制することも見出している。本年度はさらに、NF-κBのシグナル伝達の上流分子に及ぼすグルコサミンの影響とO-GlcNAc修飾との関係を調べた。 IκBαはリン酸化されることでプロテアソームによる分解を受けるが、グルコサミンはIκBαのリン酸化を触媒するIKKβ(IκB kinase)をO-GlcNAc修飾し、その活性化(リン酸化)をO-GlcNAc修飾依存的に抑制することが分かった。さらに、O-GlcNAc修飾を受けないIKKβ変異体を発現させると、グルコサミンによる炎症性サイトカインの産生抑制作用が、消失する傾向があった。これらのことからグルコサミンは、NF-κBやIKKβを直接O-GlcNAc修飾することで、これらタンパク質の機能を抑制し、NF-κBによる炎症性サイトカイン遺伝子の転写活性化を抑制していると考えられる。このように本研究で明らかとなったタンパク質のO-GlcNAc修飾を介した作用が、グルコサミンの抗炎症作用を発揮するためのメカニズムのひとつであると推測される。
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