研究課題/領域番号 |
15K00845
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
宮崎 哲朗 順天堂大学, 医学部, 准教授 (30600473)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 心筋内中性脂肪 / MRS / ミトコンドリア代謝 / 脂肪酸代謝 / バイオマーカー / CICU |
研究実績の概要 |
特定の脂肪酸が心血管疾患発症進展に関与している事は報告されているが、血中脂肪酸バランスの異常が、心筋内脂肪酸代謝に与える影響については不明である。本研究の目的は、心疾患患者における血中脂肪酸バランスと心筋脂肪酸代謝との関連を、新たな非侵襲的心筋内中性脂肪(TG)量測定法である1H-magnetic resonance spectroscopy (MRS)法を用いて検討、さらには、食事プログラム、脂肪酸摂取による介入の心筋脂内TG量への影響を基礎的・臨床的に検証し、心筋脂肪酸代謝に対する有効な介入法を確立、心疾患に対する新たな、かつ効果的な食事プログラム、治療法の開発に繋げる事である。 初年度はCoronary Intendive Care Unit (CICU)に入室した種々の心血管疾患患者のデータベース作成、血液検体等の保存、解析を前向き研究として進めてきた。その中で、ミトコンドリア脂肪酸代謝に必要な微量栄養素であるカルニチンのアシル化が心不全患者の予後不良に関連することを日本心臓病学会(2015年9月横浜)で報告した。 またMRS法による心筋内中性脂肪測定法の確立ならびに健康正常人における測定値を検証し論文報告をしている(Intern Med. 54:367-373, 2015)。今後、これらの正常健常者とCICU入室患者での特性の違いを検討していく予定である。動物実験としては、ω3系長鎖脂肪酸脂肪酸投与により、アンギオテンシンII負荷大動脈瘤モデルマウスの大動脈瘤形成が抑制されること報告している(Circ J. 79:1470-1478, 2015)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
CICUでのデータベース作成、血液検体保存、脂肪酸代謝に関わる長鎖脂肪酸、アシルカルニチン、コエンザイムQ10等の各種測定は順調である。疾患群におけるMRSによる心筋内中性脂肪測定がやや遅れているが、測定に関わる大学院生、スタッフが増加したことにより、今後進捗していくと考えている。 動物実験に関しては、極長鎖脂肪酸蓄積モデルマウスの繁殖に予想より時間がかかっているが、その他の疾患モデルマウスに対する脂肪酸投与の研究の結果はすでに論文化が始まっており、概ね順調と言える。
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今後の研究の推進方策 |
臨床研究に関しては、予定どおりCICU入院患者において脂肪酸代謝に関わる微量栄養素の測定を継続、解析をしていく。当初の研究目的では、これらの栄養素を是正する食事プログラムを作成することとなっているが、それに加え心臓リハビリテーションがこれらの栄養素にどのような影響を与えるかも考察する。 動物実験に関しては、極長鎖脂肪酸蓄積モデルマウスによる実験を最終目標とするが繁殖に予想より時間がかかっており、種々の疾患モデルマウスに対する脂肪酸投与、カルニチン投与の介入研究を並行して行うこととする。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度に関しては、科学研究費とともに学内における研究予算(学長プロジェクト研究)を取得できたため、当初科学研究費から捻出する予定であった物品購入、旅費にあてることが可能となった。そのため、その額に相当する繰越金が発生した。
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次年度使用額の使用計画 |
物品費、人件費に関しては、研究協力を行う大学院生、スタッフの増員が決定したため、統計解析用PC、統計解析ソフトの追加購入を行い、データベース作成補助者に対する人件費に使用する予定である。 旅費に関しては初年度においては学会参加は国内学会一回のみで、他の研究費使用でまかなうことが可能であった。本年度は米国心臓病学会、欧州心臓病学会参加予定であり、その渡航費用に当てる予定である。
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