研究課題
特定の脂肪酸が心血管疾患発症進展に関与していることは報告されているが、血中脂肪酸バランスの異常が心筋内脂肪酸代謝に与える影響については不明である。本研究の目的は、心血管患者における血中脂肪酸バランスと心筋脂肪酸代謝のとの関連を、新たな非侵襲的心筋内中性脂肪(TG)量測定法である1H-magnetic resonance spectroscopy(MRS)法を用いて検討、さらには食事プログラム、脂肪酸摂取による介入の心筋内TG量への影響を基礎的・臨床的に検証し、心筋内脂肪酸代謝に対する有効な介入法を確立、心疾患に対する新たなかつ効果的な食事プログラム、治療法の開発に繋げる事である。本年度も引き続き、Coronary Intensive Care Unit(CICU)に入室した種々の心血管疾患患者のデータベース作成を継続、血液検体等の保存、解析を前向き研究として進めてきた。その中で心筋内ミトコンドリア代謝に関わるCoenzymeQ10(CoQ10)がCICU入院患者の院内死亡に関わること(Heart Vessels 2017)、血中ω6脂肪酸低値が栄養状態と独立して心不全患者の長期予後不良と関連すること(Lipid Health Dis 2017, Nutrients 2017)を報告している。 またMRS法による測定により肥大型心筋症患者では、高血圧性心臓病患者に比べ、心筋内中性脂肪量が低値であること(Heaet vessels 2017)を報告している。ω3脂肪酸低値が静脈血栓症発症と関連すること(Journal of Atherosclerosis and Thrombosis 2017)、腹部大動脈瘤拡大に寄与していること(Journal of Atherosclerosis and Thrombosis 2017)を報告している。またエイコサペンタエン酸が、心疾患患者におけるビタミンD欠乏と炎症との関連を改善する可能性について学会発表を行っている。
2: おおむね順調に進展している
CICUにおけるデータベース作成、血液検体保存、脂肪酸代謝に関わる長鎖脂肪酸、アシルカルニチン、CoQ10等の測定は順調である。疾患群におけるMRS測定は、昨年同様やや遅れているが、測定患者数は加速している状況である。動物実験に関しては極長鎖脂肪酸蓄積モデルマウスの繁殖が困難な状況は継続しているが、代替としてのアンギオテンシン負荷動脈瘤モデルマウスによる実験が進行中である。
臨床研究に関しては、当初の予定通りCICU入院患者の脂肪酸、微量栄養素、MRS測定を行なっていく。現在心不全患者に対するカルニチン投与の臨床研究を進めている。同様に静脈血栓症ハイリスク患者に対するω3脂肪酸投与の臨床研究を開始している。動物実験に関しては極長鎖脂肪酸蓄積モデルマウスの繁殖が困難な状況は継続しているが、代替としてのアンギオテンシン負荷動脈瘤モデルマウスによる実験が進行中である。これまでに同モデルに対する脂肪酸投与による炎症抑制効果が認められていることかとから、免疫抑制剤を使用したメカニズムの検討を行っている。
(理由)平成28年度に受領した研究予算の繰越し金が当初からあり、引き継いで繰越し金が発生してる状況である。本年度は、論文の英文校正費用、国内、海外での研究発表を複数回行い適正に使用がなされている。(使用計画)研究最終年度であり、主に英文校正費、国内、海外での研究発表の旅費等に使用する予定である。
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