研究課題
本研究は,従来あまり研究されてこなかった低栄養時の脂肪肝に着目し,1)発症メカニズム解明のための新しい血液マーカーの開発,2)それによる脂肪肝の病態分類,さらに,3)病態ごとの最適な栄養管理方法の確立を目標としている。平成28年度は,平成27年度に引き続いて,糖・脂質・アミノ酸代謝系の評価に応用できる血清バイオマーカー測定法の開発と,それを用いた基礎的検討を行った。アミノ酸と脂肪酸代謝に関するマーカーの分析方法は,昨年度までにほぼ完成しているが,今年度はそれに加えて,コリン代謝,カルニチン代謝,解糖系とTCAサイクルに関連するマーカー候補化合物の分析方法を開発した。具体的には,血清にアセトニトリルを添加して除蛋白したサンプルを使って,コリン,ベタイン,カルニチン,アセチルカルニチン,パルミトイルカルニチン,ピルビン酸,クエン酸,イソクエン酸,αケトグルタル酸,フマル酸,リンゴ酸,コハク酸などを,高速液体クロマトグラフィー・タンデムマススペクトロメトリー(LC-MS/MS)で分析する方法を開発した。さらに,これらのマーカーを,健常者および通常の過栄養性脂肪肝患者の血清で測定して基礎データを得ると共に,低栄養性脂肪肝の例として,シトリン欠損症患者の血清でも分析を行った。一方,細胞を用いた脂肪肝の基礎実験として,核内レセプターLiver X receptorα (LXRα)の活性化(リガンドの添加)により,マウスの培養肝細胞に脂肪肝を再現させ,各種脂肪酸β酸化の促進物質の添加によって,その脂肪肝を改善させる試みを開始した。
2: おおむね順調に進展している
血清マーカーの分析方法がほぼ確立され,臨床検体を用いた検討が開始されているため。
平成29年度は,脂肪肝患者を含む各種消化器疾患患者の血清マーカー測定をさらに進め,低栄養性脂肪肝の病態を明らかにする。また,可能であれば実験動物(マウス)を用いた病態の再現を計画している。
収集できた血清サンプルが予想より少なく,血清マーカーの分析数も予定を下回ったため。
生じた次年度使用額分は,血清マーカー分析用の試薬とカラム等消耗品に使う予定である。平成29年度の直接経費は,分析用消耗品のほか,実験モデル動物のサンプル購入にも使用する予定である。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (2件)
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