研究課題
本研究は,従来あまり注目されてこなかった低栄養時の脂肪肝に着目し,発症メカニズムの解明と,診断・治療・予防に有用な新しい血液マーカーの開発を目指すことを目的とした。平成28年度までに,糖,脂質,アミノ酸代謝に関連する中間産物の血中濃度を,高速液体クロマトグラフィー・タンデムマススペクトロメトリー(LC-MS/MS)で分析する方法を開発し,平成29年度にかけては,消化吸収障害によって脂肪肝を引き起こすクローン病と,ミトコンドリアのエネルギー代謝障害によって脂肪肝を引き起こすシトリン欠損症について,詳細な検討を行った。その結果,クローン病の血清では,核内レセプターLXRαのリガンドとなる酸化ステロールが有意に増加し,脂肪酸合成促進に働いているものと考えられた。また,FGF19の低下とC4の上昇より,核内レセプターFXRは不活性化されているものと考えられ,それによってさらなる脂肪酸の合成促進と異化(β酸化)の低下が起きているものと推測された。一方,シトリン欠損症では,リンゴ酸-アスパラギン酸シャトルの障害により細胞質のNAD+とミトコンドリアのATPが枯渇状態となり,それらを補うために糖質利用は制限され,脂質とアミノ酸に依存した状態となっていると考えられている。血中クエン酸の増加とリンゴ酸の減少を認めたことから,リンゴ酸-クエン酸シャトルがフル回転し,ミトコンドリア外に出たクエン酸が脂肪酸合成に利用されて脂肪肝を促進しているものと考えられた。以上のように,脂肪肝の3大原因である過栄養,糖尿病,アルコールによらない,原因不明の脂肪肝の病態解明には,血液中代謝物のメタボローム解析が有効であると考えられた。
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Inflamm. Bowel Dis.[Epub ahead of print]
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10.1093/ibd/izy022
JIMD Rep.[Epub ahead of print]
10.1007/8904_2018_99.