研究課題/領域番号 |
15K00850
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研究機関 | 東京家政学院大学 |
研究代表者 |
海野 知紀 東京家政学院大学, 現代生活学部, 准教授 (90439753)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | フラボノイド / 腸内細菌 / 短鎖脂肪酸 / アミラーゼ |
研究実績の概要 |
大腸に生息する腸内細菌の菌叢は,様々な食事因子によって変化する。また,腸内細菌の発酵代謝産物である短鎖脂肪酸は,交感神経系を介してエネルギー消費を促進させることから,宿主のエネルギー代謝に関連すると理解されている。一方,植物性食品に広く含有されるフラボノイド化合物は,一般的に生体利用性が低く,それらの一部は大腸へと移行するため,腸内細菌による短鎖脂肪酸産生に影響することが考えられる。本研究では,フラボノイド化合物が腸内細菌叢に及ぼす影響について,ラットの盲腸内短鎖脂肪酸含有量を指標にして評価することを目的とした。 へスペリチンとその配糖体であるヘスペリジンをそれぞれ0.5%と1.0%となるように混餌し,3週間投与した。解剖時に盲腸を摘出し,盲腸内容物中の短鎖脂肪酸を高速液体クロマトグラフィー法により求めた。その結果,コントロール群と比較して0.5%ヘスペレチン群では盲腸内容物中の酢酸,酪酸の含有量が有意に増加した。一方,1.0%ヘスペリジン群ではそのような効果は認められなかった。さらに,糞中に排泄されたデンプンを測定した結果,コントロール群と比較して0.5%ヘスペレチン群で有意な排泄増加が観察された。以上より,ヘスペレチンは腸管内でデンプンの消化を抑制することで,そのデンプンが腸内細菌による発酵基質として利用されたのではないかと推察された。 次に,フラボノイド化合物の種類を広げて,0.5%ケルセチン,1.0%ルチンについて,上述の方法に従い,ラットに混餌投与を行った。その結果,コントロール群と比較して0.5%ケルセチン群の盲腸内容物重量が増加傾向を示し,1.0%ルチン群では有意な増加が認められた。現在,盲腸内短鎖脂肪酸含量の測定を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
フラボノイド化合物として,まずはヘスペレチンとヘスペリジンを用いて動物実験を行い,得られたサンプルの解析により,ヘスペレチンの方が盲腸内容物中の短鎖脂肪酸含量は高いという結果が得られた。このことはアグリコンとその配糖体ではin vivoにおける作用が異なることを示唆するものであり,フラボノイドの構造が腸内細菌に対する作用に重要であるとの知見が得られた。これらの結果を踏まえて,現在はケルセチンとルチンによる影響解析を進めているところである。以上は,平成27年度の研究計画をほぼ達成するものであり,おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
生活習慣病を中心とした疾病に対する腸内細菌の関与が明らかになり,食品成分がどのように腸内細菌叢に介入しているかに注目が集まっている。このような背景により,近年では多くの研究報告がなされている。今後は文献調査を詳細に行い,作用機序の解明についても着目しながら研究課題の解明を推進していく。
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