生活習慣病の進展と、大腸に棲息する腸内細菌叢との関連性に注目が集まっている。短鎖脂肪酸は主に大腸に到達した炭水化物を基質として腸内細菌によって発酵産生され、宿主のエネルギー代謝や消化管ホルモン分泌に関与する。本研究では、フラボノイド化合物の腸内細菌叢を介した短鎖脂肪酸産生への影響を検討した。 水への溶解性が異なるヘスペレチンとその配糖体であるヘスペリジンを用い、ラットへの投与実験を行った。盲腸内容物中の短鎖脂肪酸含量は、水溶性が高いヘスペレチンの方が高かった。飼育3週目に回収した糞の腸内細菌叢をT-RFLP法で解析したところ、コントロール群と比較して、ヘスペレチン群のClostridium subcluster XIVaが有意に減少した。また、膵α-アミラーゼに対する阻害作用はヘスペレチンの方が強かったことから、ヘスペレチンは食餌性デンプンの大腸への流入を促進し、これが盲腸内での発酵性に寄与したのではないかと示唆された。 次に、ケルセチンとその配糖体であるルチンについて比較検討を進めた。その結果、盲腸内容物中の短鎖脂肪酸含量が高い傾向を示したのは水溶性の低いケルセチンであった。このことより、フラボノイド化合物の水への溶解度のみが盲腸での短鎖脂肪酸産生に影響するのではないと推察された。 膵α-アミラーゼに対する阻害作用が異なる緑茶抽出物と紅茶抽出物を用い、ラットへの投与実験を行った。緑茶に含まれるフラボノイド化合物は短鎖脂肪酸産生に抑制的に働いたのに対し、紅茶抽出物に含まれるポリフェノール化合物は盲腸内容物中の短鎖脂肪酸含量を高める傾向が認められた。
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