研究課題
食後脂質代謝、即ち、食後の血中トリグリセライド(TG)値上昇は、空腹時の値よりも動脈硬化性疾患の危険因子として重要であることが示されている。これまでの我々の研究で、甘味料として広く用いられている果糖および果糖ブドウ糖液糖(HFS)が食後脂質代謝を著明に増悪・遅延させることを示した。一方、希少糖の一つ、D-プシコース(アルロース)については、糖代謝を改善し、糖尿病を予防する効果が期待されている。本研究は、果糖やHFSの、とくに若年者の健康に対する悪影響を防止するための方策を明らかにすることを目的とし、これまで2年間の研究で以下のことを明らかにした。①食後脂質代謝に対するプシコースの影響を、果糖およびHFSと比較検討した。糖質代謝については、脂肪と同時にプシコースを摂取した場合には、脂肪のみを摂取した場合と比べて血糖及びインスリン濃度に有意な影響はなく、果糖やショ糖に比べて明らかに優れていた。一方、脂肪と同時にプシコースを摂取した場合には、脂肪と同時に果糖を摂取した場合と同様に、食後リポ蛋白代謝の遅延・増悪を来すことを示した。②市販の希少糖含有シロップ(RSS)を用いて、同様にHFSやショ糖と比較検討を行ったが、RSSの優位性を見出すことはできなかった。そこで最終年度には、果糖の食後脂質代謝に対する害を、果糖をプシコースで置換することによって防止しようとするこれまでの発想を転換し、果糖の害を他の物質で予防できるか否かを検討した。食後の高血糖・高脂血を軽減できる可能性が示唆されている水溶性食物繊維である難消化性デキストリン(RMD)に注目し、①脂肪クリームのみ、②脂肪クリーム+RMD、③脂肪クリーム+果糖、④脂肪クリーム+果糖+RMDの計4回の摂取試験を行い、果糖による食後高脂血に対するRMDの効果を検討した。しかし、RMDは果糖による食後TG値上昇の増悪を抑制できなかった。
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