研究課題/領域番号 |
15K00857
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研究機関 | 愛知淑徳大学 |
研究代表者 |
安藤 富士子 愛知淑徳大学, 健康医療科学部, 教授 (90333393)
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研究分担者 |
大塚 礼 国立研究開発法人国立長寿医療研究センター, NILS-LSA活用研究室, 室長 (00532243)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | カロテノイド / サルコペニア / 喫煙 / 筋量 / 縦断研究 / 中高年者 |
研究実績の概要 |
本研究では酸化ストレスモデルとしての喫煙に焦点をあて、地域在住中高年者3,983人の最長12年間の縦断データを用いて、サルコペニア発症に対するカロテノイドと喫煙との交互作用を検討し、カロテノイドが特に喫煙者においてサルコペニアリスク軽減効果を示すかどうかを明らかにすることを目的とした。 1.研究成果の具体的内容;平成27年度の基礎解析に引き続き、本年度はサルコペニアや骨格筋量の加齢変化に対する喫煙・カロテノイドそれぞれの主効果について検討した。具体的な研究成果として 1)無作為抽出された地域住民コホートの縦断データを用いて我が国の高齢者におけるサルコペニアの推定新規発症率・発症者数を明らかにした。2)喫煙がサルコペニアや筋量の低下に及ぼす影響について中高年男性で検討し、喫煙者は非喫煙者に比して骨格筋量が2.1%低下していること、喫煙の影響はすでに中年期には固定化しており、その後の喫煙の持続の有無により、筋量低下量に有意な差は認められないことを明らかにした。3)カロテノイドの摂取量および血中濃度が骨格筋量の縦断的変化に及ぼす影響を検討したところ、高齢男性で有意な結果が得られ、βカロテンおよび緑黄色野菜摂取量が高い集団では骨格筋指数(四肢骨格筋量を身長の2乗で除した指数)が有意に高く、血清リコペン・血清βクリプトキサンチン値が低い集団では骨格筋指数が有意に低値を示すことを明らかにした。 2.研究成果の意義と重要性;本研究の根幹の仮説である「喫煙は筋肉量・サルコペニアに悪影響を及ぼしている」、「カロテノイドは筋肉量(サルコペニア)の加齢変化に対して予防的作用を持つ」を本年度の研究で実証できたと考える。これらはサルコペニアの予防を考える上で極めて重要な知見であり、特に男性においてサルコペニアが顕在化する中年期より前に禁煙することの重要性を示すことができたことは社会的にも重要な成果である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度までの研究目標は、喫煙とカロテノイド、それぞれがサルコペニアや骨格筋量の縦断的変化に及ぼす影響を明らかにすることであった。 この目標をすべて達成し、結果として当初の研究仮説に合致した結果が得られた。 このことから研究課題の進捗状況は順調であり、平成29年度(最終年度)の研究課題に向けての準備が整っていると考える。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度の研究成果をもとに最終年度である平成29年度には、サルコペニアや骨格筋量の加齢変化に対して喫煙が及ぼす影響をカロテノイド摂取が緩和しうるかどうかについて明らかにする。平成28年度の統計解析モデルの中で、最も鋭敏に喫煙・カロテノイドの影響を示したモデルを選択し、サルコペニアや骨格筋量の加齢変化に対して、喫煙とカロテノイド摂取・血中量の交互作用が有意となるかどうかについて検討する。 交互作用が有意であった場合には、喫煙によるサルコペニア・筋量減少を緩和するのに必要なカロテノイドの種類と量を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究申請当初、平成28年度および平成29年度に海外での学会発表を予定していたが、平成29年度の海外発表に掛かる旅費が当初見込んだより高額になったため、平成29年度(研究最終年度の最終成果の公表)を優先し、平成28年度の海外での学会発表を取りやめた。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度にはアメリカのサンフランシスコで行われるIAGG(国際老年学会)で本研究の最終成果である「カロテノイドのサルコペニアリスク軽減効果-喫煙との交互作用」について発表する予定である。この旅費・宿泊費に当初22万円の支出を見込んでいたが、現時点での見積額が約50万円となっているため、繰り越した研究費を主にこの差額に充てる。
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備考 |
老化に関する長期縦断疫学研究(NILS-LSA) http://www.ncgg.go.jp/cgss/department/ep/index.html
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