研究実績の概要 |
本研究では酸化ストレスモデルとしての喫煙に焦点をあて、地域在住中高年者3,983人の最長12年間の縦断データを用いて、サルコペニア発症に対するカロテノイドと喫煙との交互作用を検討し、カロテノイドが特に喫煙者においてサルコペニアリスク軽減効果を示すかどうかを明らかにすることを目的とした。 1.研究成果の具体的内容 初年度にはサルコペニア、喫煙状況、カロテノイド摂取量および血中カロテノイド濃度に関する基礎解析を行い、2年目にはサルコペニア発症に対する、喫煙・カロテノイドそれぞれの効果について検討し、最終年度にはサルコペニアに対する喫煙・カロテノイドの交互作用について関連要因を調整して検討した。その結果、男性喫煙者では非喫煙者に比して筋量が2.1%低下していた。喫煙の影響は中年期に固定化し、その後の喫煙の有無による筋量低下への有意な影響は認められなかった。カロテノイドは高齢男性で縦断的に筋量低下を抑制する作用を示した。交互作用に関してはβ-クリプトキサンチン摂取量が少ないと喫煙者では非喫煙者に比して縦断的な筋量低下を来しやすいが摂取量が多い群では有意な差が認められないことが明らかになった。 2.研究成果の意義と重要性 本研究は喫煙による筋量低下リスクをカロテノイドが軽減しうるかどうかを検討した、世界で初めての研究である。結果として我が国で多く食されるミカンに由来するβ-クリプトキサンチンに男性喫煙者の筋力低下を抑制する作用があることが示された。サルコペニアは特に高齢男性で頻度が高いが、喫煙によるサルコペニアリスクを日常摂取可能な量でのカロテノイド摂取が抑制する可能性が示されたことの医学的・社会的意義は大きい。
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