極端な糖質制限を施行することによって、GLP-1及びインスリンの分泌能が低下することを明らかにするために、介入試験を行なった。最終年度は6名の被験者を対象とした。 健全な食生活を続けている耐糖能異常のない6名の女子大学生(21.8±0.4 歳、BMI 20.2±1.1 kg/m2)を被験者として、3ヶ月のオープン介入試験を行った。介入の内容は、糖質エネルギー比が30%程度となるように食事の糖質量を被験者ごとに設定し、3食のうち1食は主食を欠食させた。介入試験前後に体組成測定と静脈採血および75gOGTT、3日間の食事記録による調査を実施した。 その結果、血糖値、インスリン値、インスリン初期分泌、インスリン感受性、GLP-1、体格などすべてにおいて明らかな変化は認められなかった。 しかしながら、これまでの3年間で介入したすべてを合わせた被験者21名(21.5±0.5 歳、BMI 21.1±1.1 kg/m2)においては、3ヶ月間の低糖質食の実施によって、OGTTにおけるインスリン(IRI)30分値、IRIの曲線下面積およびインスリン初期分泌値は有意に低下した。これに対してインスリン感受性を示す値は有意に増加した。血糖値及びGLP-1は、いずれにおいても有意な変化はなかった。体脂肪率は有意に低下したが、体重及びBMIに有意な変化はなかった。栄養摂取量において、エネルギー摂取量および炭水化物摂取量が有意に減少し、脂質摂取量は有意に増加した。一般化線形モデルを用いた⊿インスリン初期分泌値に影響する因子の検討では、⊿炭水化物摂取量のβ ± SEは0.438±0.141(P=0.006)と有意であった。 以上のことから、3ヶ月間の低糖質食摂取により、インスリン分泌能が低下することが示唆された。先行研究(平成23~25年度科研費研究)と合わせると、仮説は立証されたと考えられる。
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