研究課題/領域番号 |
15K00861
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
木戸 慎介 近畿大学, 農学部, 准教授 (30437652)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 慢性腎臓病 / 骨ミネラル代謝障害 / FGF23 / 尿毒症物質 |
研究実績の概要 |
リン利尿因子であるFGF23の活性制御については、転写誘導による発現調節に加えて、タンパクの分子内切断による制御を受けること、またこの分子内切断はプロテアーゼによる切断およびO型糖鎖修飾酵素による切断部位付近への糖鎖付加による調節という、複雑な経路の存在が知られている。申請者はこれまでにイタイイタイ病の原因物質であるカドミウム (Cd)がGalNAc-T3の誘導を介してFGF23の安定化を促し、これが本症にみられる骨・ミネラル代謝障害の一因であることを報告している。またこのCdによるGalNAc-T3の誘導については、芳香族炭化水素受容体 (AhR)依存的な転写誘導によるものであることを見いだしている。そこで本研究計画では、イタイイタイ病と同じく、骨ミネラル代謝障害を呈する慢性腎臓病患者でのFGF23誘導についても同様の機序(AHR-GalNAc-T3-FGF23)が関与すること、およびその惹起因子としてCKD患者体内で蓄積のみられる尿毒症物質の一種であるインドキシル硫酸(IS)に着目し解析を試みた。培養骨芽細胞にISを添加したところ、FGF23産生の増加を認めたが、これは内因性GalNAc-T3のknockdownにより減弱した。またISによる当該遺伝子の誘導はAhRを介した転写誘導であることをreporter assayにて確認している。またAdenine投与腎障害モデルでは腎機能低下に加えて血清リン並びにFGF23値の顕著な上昇を認めるが、これは経口尿毒症吸着薬であるクレメジンの投与によりいずれも低下した。以上の成績は、尿毒症物質であるISがGaLNAc-T3の誘導を介してFGF23の安定化を促す可能性を示すものであり、CKD患者におけるFGF23異常高値の一因である可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
概ね計画通りである。培養系による分子機序解析はほぼ終了し、腎障害モデル動物を用いたin vivo解析においても、in vitroで得られた成果とほぼ同等であることを確認している。また次年度の計画である、当該経路を指標としたFGF23産生を抑制可能な食品並びにその機能性成分の探索について、既に候補となる食品(野菜類)の選定並びに試料(野菜由来抽出物)の調整を開始しており、準備が整い次第、直ちに検討を開始したい。
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今後の研究の推進方策 |
尿毒症物質であるISはAhR依存的にGalNAc-T3の転写を誘導することでFGF23の安定化を促す事が明らかとなった。AhRはダイオキシン類やハロゲン化芳香族炭化水素類0あるいは多環芳香族炭化水素類などの環境汚染物質の毒性発現に関わるだけでなく9p@、天然並びに食品由来物質の中にもAhRの活性化(不活性化)に関わるものが存在することが知られている。そこでH28年度は、前述のシグナル経路を指標に、ISによるFGF23活性化を阻害しうる機能性成分の探索を試みる。候補成分としてはフラボン類、フラボノール類、フラバノン、カテキン、ルテイン、インドール類などが挙げられる。今後の治療食展開を踏まえて、これら機能性成分を豊富に含むとされる野菜類を幾つかピックアップし、その抽出物を用いて、期待される効果(FGF23活性化抑制作用)を指標にスクリーニングを試みる予定である。なお候補となる野菜の選定は既に終了し、現在その抽出物の調整を行っているところである。
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