CKD患者にみられる高リン血症は骨・ミネラル代謝障害の原因になるばかりでなく、その悪化は心血管イベントの増加を来すことからもその対策は喫緊の課題である。腎機能が低下したCKD患者において血中リン濃度は食品中のリン含有量に大きく左右されることから、本患者の食事療法ではリン制限が必要不可欠であるものの、その制限は容易ではない。そこで本研究では、食事性リン負荷に応じて骨で産生され、腎でのリン排泄を促進することでリン代謝平衡維持を担うリン利尿因子FGF23に着目した。FGF23はGalNac-T3による糖鎖修飾によりその活性が制御されている。このFGF23の産生を惹起する物質の1つとして、尿毒症物質であるIndoxyl sulfate (IS)が知られており、申請者はこれまでに、ISが芳香族炭化水素受容体AhR依存的にGalNAc-T3遺伝子の転写を誘導しFGF23の産生を促すことを明らかにしている。そこで本研究では、AhR阻害活性を指標に、ISによるFGF23の産生を阻害可能な食品機能性成分の探索を試みた。本研究では、AhR阻害活性を有するとされる4種の食品(モロヘイヤ、緑茶、ブロッコリー、ブロッコリースーパースプラウト)に着目した。それぞれの食品について脂溶性/水溶性画分を抽出し、IS刺激によGalNAc-T3転写誘導に及ぼす効果について検討した。骨芽細胞用細胞株UMR-106においてIS刺激はAhRの活性化を介してGalNAc-T3遺伝子の転写を促進すること並びにFGF23産生を増加させるが、これらの効果は緑茶を除く3種の食品から抽出した成分の同時添加により強く抑制された。そこで得られたin vivoでの成果を生体で検証するため、Adenine投与腎障害モデル動物への投与実験を試みた。その結果、Adenine投与後のマウスでは血中リン濃度並びにFGF23濃度の上昇が認められたが、これは前述の食品抽出物の併用投与により改善された。
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