研究課題/領域番号 |
15K00862
|
研究機関 | 神戸女子大学 |
研究代表者 |
栗原 伸公 神戸女子大学, 家政学部, 教授 (10234569)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 高血圧予防 / 昆布 / アルギン酸 / 酢 |
研究実績の概要 |
腎血管性高血圧モデル(2K1C)ラットにおける昆布の血圧上昇抑制効果、および昆布と食酢の同時摂取による血圧上昇抑制効果増強のメカニズムを調べるため、アルギン酸の関与に焦点を当て研究を行った。前年度、食酢浸漬昆布においては、昆布と食酢との同時摂取以上の効果はわずかで有意差を見るには至らず、アルギン酸の食酢による低分子化による作用増強の可能性を示せなかった。そこで、今年度はまずこれについて観察数を増やし再検討を行った。 すなわち、SD系雄ラットに2K1C群を作成し、対照食(CTL)群、昆布添加食(K)群、食酢添加水(V)群、昆布添加食+食酢添加水(KV1)群、食酢浸漬昆布添加食(KV2)群とした。対照としてSHAMを作成しCTLを与えた(SHAM群)。飼料を術後6週間投与し、期間中週1回収縮期血圧を測定した。実験期間終了時、麻酔下にて平均血圧の測定を行った。この結果、収縮期血圧において、2K1C-CTL群はSHAM-CTL群に比べ有意に高い値を示した。また2K1C-CTL群に比べ2K1C-K、-KV1、-KV2群では有意に低下したが、2K1C-V群では有意な低下は見られなかった。2K1C-K群と比べ2K1C-KV1、-KV2群では有意に低下し、2K1C-KV2群は2K1C-KV1群に比べ有意に低い値となった。平均血圧はこれらとほぼ同様の傾向を示した。以上のことから、食酢浸漬昆布が、昆布と酢との同時摂取以上に強い血圧上昇抑制効果を示すことが示唆された。 このメカニズムにアルギン酸の低分子化が関与しているか否かを観察するために、昆布と食酢浸漬昆布中のアルギン酸をアルギン酸Naとして抽出し、ゲル浸透クロマトグラフィーにて分子量分布を測定したが、昆布と食酢浸漬昆布中における分子量分布に明確な違いは観察されなかった。今後、抽出法や測定法の再検討を含め、さらに観察を行う予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
前年度の実験結果を再検討し、観察数を増やしてより正確なデータを収集した結果、私たちの仮説である「アルギン酸のメカニズムへの関与」と「低分子化によるその作用増強」を支持する観察データが得られたことから、本研究は今年度も目的に向かって前進したと言える。しかしながら、研究代表者の研究室に所属する主力の研究協力者たちが、今年度、本研究から派生した独自テーマの研究を行う機会をそれぞれ個別に得たため、研究代表者としてはそれらを応援したい気持ちもあり、今年度に行う予定であった実験計画の一部を次年度に繰り越すことにした。そのため本年度の研究はやや遅れることとなった。 ただし、それらの研究を通じて彼らが得た成果は、本研究の今後の遂行にも大いにヒントとなり役立つものである。
|
今後の研究の推進方策 |
先述の通り、まずはアルギン酸の低分子化に関する検討を進めるため、昆布や加熱昆布、食酢浸漬昆布等における分子量分布の観察について、抽出法や測定法の再検討を含め観察を進めていく。これにより、昆布による血圧上昇抑制効果のメカニズムにおけるアルギン酸の関与を示すデータを蓄積する。 同時にアルギン酸の直接的な関与を示す観察を行う。すなわち、現在継続中のレニン・アンギオテンシン系の関与についての検討を進め、近いうちに明確な結論を得たいと考えている。また、様々な検討のなかで繰り延べてきたアルギン酸によるNa吸収抑制効果の関与の観察をいよいよ行うことにする。私たちはこれまでの検討により、メカニズムにおけるアルギン酸の役割の中でNa吸収抑制効果は必ずしも主たるものではない可能性が高いとの考えに至ったため、その観察をこれまで延期してきた。しかし、この効果も一部とはいえメカニズムに関与している可能性があることから、本研究の中でこれを確認する必要があると考えている。 次年度は最終年度となるため、これまで繰り延べてきた課題も含めて、研究協力者たちの全面的な協力も得て、メカニズムの追究のための実験、観察を集中して行う予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
研究代表者の研究室に所属する研究協力者のうち主力2名が、今年度、民間機関の競争的研究資金を各々自ら獲得し、本研究のテーマから派生した独自の研究テーマに取り組む機会をそれぞれ得ることができたため、研究代表者としてはそれらを応援したい気持ちもあって、本年度に行う予定であった研究の一部を次年度に繰り越した。それに伴い、本研究費の今年度の予算の一部も繰り越すこととなった。
|
次年度使用額の使用計画 |
今年度それぞれ自分のテーマに没頭し目覚ましく成長した博士後期課程の学生2名を含む8名の研究協力者たちが、次年度は本研究に全面的に協力してくれる予定であるため、今年度から繰り越した実験(予算:物品費30.7万円)とあらかじめ予定していた実験(予算:物品費50万円)を併せて行う予定である。さらに、本実験の成果を秋の国際学会にて発表し(予算:旅費20万円)、同じ研究分野の参加者たちと有意義な議論を行いたいと考えている。
|