本研究は、昆布摂取により高血圧モデルの血圧上昇抑制効果がもたらされるメカニズムを解明しようとするものである。これまで様々な仮説を検討してきたことから今年度はそれを整理し纏めるとともに、最後にこのメカニズムに関して以前より指摘されているアルギン酸が塩分を吸着し排出するという仮説を検討した。これまでと同様の実験方法により、腎血管性高血圧モデルラットに対し、高塩分、標準塩分、低塩分とした餌に、それぞれ昆布を加えたものと加えないものを6週間与えて血圧の比較を行ったところ、昆布を加えない群では、標準塩分摂取、高塩分摂取ともに、対照群の正常血圧モデルに比べ有意な血圧上昇を認め、標準塩分より高塩分でさらに大きな上昇が見られた。餌に昆布を加え摂取した群では、各塩分で有意な血圧上昇抑制が見られたが、高塩分の場合により大きな抑制効果が見られ、最終的に標準塩分-昆布食群が示した血圧と、高塩分-昆布食群が示した血圧はほぼ同レベルとなった。すなわち、これら両群では、摂取した塩分が増え血圧が上昇した分だけ、昆布摂取による血圧上昇抑制効果が強くなったといえる。このことは、昆布が塩分の排泄を促進することにより、血圧上昇抑制効果をもたらしている可能性を支持するものである。ただし、これは必ずしも昆布による血圧上昇抑制効果がアルギン酸の塩分吸着・体外排出によることを示すものではなく、その他の経路によるメカニズムも十分に考えられるため、現在、当該実験で採取した排泄物中の塩分量を分析するとともに、関連する遺伝子、蛋白発現の各群における増強・抑制について測定しているところである。 なお当初の予想と異なり、低塩分食では標準塩分食よりむしろ血圧が上昇していた。これに関して過去にも同様の現象を観察したとする文献もあるが、その数は少なく今後も検証が必要である。この確認とそのメカニズムの探究については、今後の課題の1つとしたい。
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