研究課題/領域番号 |
15K00864
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研究機関 | 中村学園大学 |
研究代表者 |
中野 修治 中村学園大学, 栄養科学部, 教授 (40164248)
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研究分担者 |
竹嶋 美夏子 中村学園大学, 栄養科学部, 講師 (00241183)
小野 美咲 中村学園大学, 栄養科学部, 助教 (10441726)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 乳癌 / フィトケミカル / 抗がん作用 / 一次予防 / 増殖抑制 / アポトーシス / 細胞周期 / シグナル伝達制御 |
研究実績の概要 |
我々は今まで野菜・果物に含まれるフィトケミカルが乳癌発症リスクを低下させるという疫学研究のエビデンスを乳癌発症モデラットでの検証を行うとともに、乳癌細胞を使用してフィトケミカルの抗癌作用の多彩な分子メカニズムを明らかにしてきた。今年度はリコペンとレスベラトロールのエチルメタンサルフォネート(EMS)誘発乳癌モデルでの発症予防効果、乳癌移植マウスでの乳癌増殖抑制効果について検討し、更には大豆イソフラボンの構成成分であるエコールとゲニステイン併用の増殖抑制効果とその分子機序を培養乳癌細胞を使って検討した。リコペンは乳癌発症は抑制できなかったが、乳癌組織はより分化した嚢胞状腺癌をつくる傾向が見られた。またバイオアベイラビリティーの高いメチルレスベラトロールはリコペンと同様にトリプルネガティブの乳癌に効果を示し、細胞周期をG1期に停止させ、AKT-mTORのシグナルを抑制した。またトリプルネガティブ乳癌胞を移植した担癌ヌードマウスでは腫瘍増殖を抑制する傾向が見られた。エコールはモデルラットでは乳癌発症を抑えられなかったが発症を遅らせる傾向が見られ、臨床応用の可能性が示唆された。またエコールは単独での乳癌細胞の増殖抑制効果は低かったが、ゲニステインとの併用で強い相乗的な増殖抑制作用を示し、この効果は主にBax/Bcl-xL比の上昇によるアポトーシス誘導作用によることを示した(Nutrients, in press)。このことはアジア人でダイゼインを腸管でエコールに転換できる人口割合が多いことを鑑みれば、大豆を食べるアジア人で乳癌発症が少ないという理論的根拠になりうる可能性がある。現在EMS誘発乳癌モデルラットでゲニステインとエコールの併用効果を検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
リコペン、レスベラトロール、更には大豆イソフラボンの構成成分であるエコールとゲニステインの併用について、EMS誘発乳癌モデルでの予防効果、乳癌移植マウスでの乳癌増殖抑制効果、In Vitroでの乳癌細胞の増殖抑制の分子機序の実験はほぼ順調に進んでお、り、一部は論文を投稿し受理された。予防効果がほとんど見出せなかった動物での発症予防実験や担がんマウスでの増殖抑制実験は、投与する餌中のフィトケミカルの濃度を上げて再度行っているため、結論が出るまでまだ時間がかかる。
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今後の研究の推進方策 |
In Vitroでの乳癌細胞の増殖抑制の分子機序をの実験については変更はないが、EMS誘発乳癌モデルでの予防効果や乳癌移植マウスでの乳癌増殖抑制効果については、投与する餌中のフィトケミカルの濃度を上げることと、血中濃度の測定をラットヤマウスの数を増やして行うことにした。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験に携わる大学院生の人数が減り、実験に関わる消耗品の購入額が減ったことと、動物実験でのフィトケミカルの血中濃度測定の外注検査が減ったことが大きな原因である。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は大学院生が増えるため実験に関わる消耗品が増加すると予想されるため、消耗品購入の補填に当てる。また血中濃度測定と病理組織標本(免疫組織染色を含む)の依頼に当てる。
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