研究実績の概要 |
メタボリックシンドロームや生活習慣病の要因となる肥満は増加の一途をたどっており、その予防・治療法の開発は世界的な課題となっている。その一つの手段として、植物などに含まれる抗肥満物質を探索し、その作用機構を解明する研究が盛んにおこなわれている。本研究では和歌山県原産の香酸柑橘であるジャバラ由来の抗肥満物質を探索し、その作用機構を解明することを目的とした。 これまでの成果として、脂肪前駆細胞である3T3-L1細胞に対する脂肪滴蓄積抑制効果を指標として、ジャバラ果皮抽出液より3種のポリメトキシフラボノイドを単離、構造決定した。また、これら3種の活性物質は、脂肪細胞内で脂肪合成に大きくかかわる酵素であるグリセロール-3-リン酸脱水素酵素の誘導に対しても、強い抑制効果を示すことを明らかにした。さらに、活性物質の脂肪細胞に対する浸透能、脂肪分解活性および脂肪蓄積に関与する遺伝子の発現に対する活性について検討した。まず、脂肪細胞に対する浸透能では、活性物質で処理した細胞を溶解し、細胞内の成分をHPLCにより分析したところ、すべて活性物質が細胞内に浸透していた。特に活性物質の一つである3-hydorxy-5,6,7,8,3',4'-hexamethoxyflavoneは細胞内でグルクロン酸抱合されていることがLC-MS分析により明らかになった。しかし、浸透能と活性の相関関係は見いだせなかった。次に、脂肪細胞に対する脂肪分解活性では、すべての化合物が強い脂肪分解活性をしめし、肥満改善効果への期待が持てた。さらに、活性物質の一つである3,5,6,7,8,3',4'-pentamethoxyflavoneの脂肪蓄積に関与する遺伝子の発現に対する活性についてRT-リアルタイムPCRにより検討した結果、PPAR-γおよびGUL-4の遺伝子発現を強く抑制していることが明らかになっている。
|