研究課題
肥満の内臓脂肪組織における慢性炎症はメタボリックシンドローム発症の原因となる。カロテノイドのβ-クリプトキサンチンは3T3-L1脂肪細胞で慢性炎症に関わるクラスⅡ主要組織適合遺伝子複合体の発現抑制作用を示す一方で食餌性肥満モデルマウスの精巣上体周囲脂肪組織の炎症抑制作用を殆ど示さなかったが、ポリフェノールのクルクミンは弱い炎症抑制作用を示した。そこで、飼料中に添加した抗酸化食品成分のクルクミン(0.1%)及びケルセチン(0.05%)が食餌性肥満モデルマウスの精巣上体周囲脂肪組織に及ぼす影響を比較検討した。遺伝子発現の網羅解析の結果は、ケルセチンが強い炎症抑制作用を示すこと、またクルクミンの炎症抑制作用は弱いが、酸化ストレス及び小胞体ストレスの抑制作用が強いことを示唆していた。組織化学的・生化学的解析及び定量RT-PCRを用いた解析結果から、クルクミンは脂肪組織におけるマクロファージの蓄積を抑制するが、アディポサイトカインを含めた炎症性サイトカインの産生抑制作用はケルセチンに比べて弱いことが明らかになった。ケルセチンは肝臓において脂質代謝に関わるPPARαの発現を誘導し、肝臓での脂肪蓄積抑制作用及び血中脂質低下作用が強く、内臓脂肪組織の脂肪蓄積抑制作用を示す。一方、精巣上体周囲脂肪組織における脂質の網羅解析の結果等から、クルクミンは脂肪合成を抑制することが示唆されたが、脂肪組織における脂肪蓄積抑制作用は殆ど認められなかった。クルクミンは酸化ストレスを介した炎症作用に関連する転写因子のNF-κBやアラキドン酸 5-リポキシゲナーゼの発現抑制作用等を示す。これらのことから、クルクミンは内臓脂肪組織における酸化ストレス抑制作用及び脂肪合成抑制作用等を介して慢性炎症抑制作用を示すが、ケルセチンは脂肪蓄積抑制作用を介してより強い慢性炎症抑制作用を示すと考えられた。
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