• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2017 年度 実施状況報告書

災害時における食・栄養の支援システム構築に関する研究

研究課題

研究課題/領域番号 15K00868
研究機関国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所

研究代表者

笠岡 宜代 (坪山宜代)  国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所, 国立健康・栄養研究所 国際栄養情報センター国際災害栄養研究室, 室長 (70321891)

研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2020-03-31
キーワード災害 / 栄養
研究実績の概要

東日本大震災の被災地での食・栄養に関連する問題を解析し、その教訓と課題を平時からどのように解決できるか検討するため、本年度は避難所の食事を改善する新たな要因の探索を行った。
宮城県内の避難所386か所を対象とした、「避難所食事状況・栄養関連ニーズ調査(調査主体:宮城県保健福祉部)」の結果を二次利用し、被災から約一カ月、二か月、三カ月後の食事内容や炊き出し回数、献立作成者等について解析を行った。
被災から約一カ月後、1日の食事提供回数が0回または1回だった避難所はなかった。食事提供回数が2回の避難所に比べ3回の避難所では主食の提供は有意に多かった。食事回数以外の改善要因について検討したところ、炊き出し回数が多い避難所では、主食・主菜・副菜・果物の提供回数が多かった。また、栄養士らが献立を作成した避難所では、乳製品および果物の提供回数が多かった。
しかし、実態として栄養士が炊き出しに関わっていた避難所は多くなく、被災者自身が炊き出し実施者である避難所の割合が最も多かった。次に多かったのは自衛隊であり、ボランティアと続いた。自衛隊による炊き出し実施は、規模が大きな避難所で多かった。また献立についても、被災者自身が献立作成者である避難所の割合がどの時点においても最も多かった。献立作成者の回答には、栄養士も含まれていたが、自衛隊やボランティアと同程度の割合であった。栄養士、自衛隊、ボランティアの外部支援者による献立作成は、規模が大きな避難所で多かった。
炊き出し実施は、災害時に栄養バランスを改善し、さらに献立作成者が栄養士らの場合、乳製品や果物も増えていた。しかし、炊き出しを被災者自身が行っている避難所が多かったことから、防災訓練等で炊き出しスキルを高めるとともに、栄養士らを含む外部支援者の円滑な導入方法に対する取り組みが必要である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

東日本大震災の食・栄養環境に関する調査を解析し、東日本大震災の食・栄養の実態を解析し、災害時の栄養問題を解決する方法(炊き出しの実施、栄養士らの献立作成での活用等)を論文として公表できたため。

今後の研究の推進方策

平成29年度に引き続き、東日本大震災の食・栄養環境に関する調査を分析し、東日本大震災の被災地での食・栄養問題の実態および影響要因、実際に派遣された管理栄養士・栄養士による支援活動内容の実態および支援体制の影響等を解析する。
また、平成28年度に発生した熊本地震等についても同様に解析する。

次年度使用額が生じた理由

(理由)本年度得られた研究成果は、国内の読者に向けて発信する方が意義があると判断したため、英文誌でなく日本語の雑誌を選び、英文校正にかかる費用を大幅に削減できたため。また、新規調査を行うためには、過去の実態把握を詳細に解析し、それをもとに行うことが望まれることが本年度の調査結果から判明した。そのため、既存データ分析を優先し、予算を効果的に使うために新規調査を見送ったため。

(使用計画) 次年度は、国内のみならず海外の英文誌においても研究成果を発表する予定であるため、英文校正、査読費用、掲載料等にも使用を予定している。

備考

【受賞】
笠岡(坪山)宜代「災害栄養に関する研究」第64回日本栄養改善学会学術総会 学会賞 2017年9月
笠岡(坪山)宜代「災害時の栄養に関する研究」平成29年度医薬基盤・健康・栄養研究所 研究発表会 ベストプレゼン賞第3位, 2017年12月

  • 研究成果

    (19件)

すべて 2018 2017

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (12件) (うち国際学会 1件、 招待講演 6件) 図書 (4件)

  • [雑誌論文] 東日本大震災の避難所を対象とした炊き出し実施に関する解析~自衛隊、ボランティア、栄養士による外部支援の状況~2017

    • 著者名/発表者名
      笠岡(坪山)宜代、原田萌香
    • 雑誌名

      日本災害食学会誌

      巻: 5 ページ: 1-5

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] 東日本大震災の避難所における食事提供体制と食事内容に関する研究2017

    • 著者名/発表者名
      原田 萌香, 瀧沢 あす香, 岡 純, 笠岡(坪山) 宜代
    • 雑誌名

      日本公衆衛生雑誌

      巻: 64 ページ: 547-555

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] 東日本大震災における栄養士から見た口腔保健問題2017

    • 著者名/発表者名
      笠岡(坪山)宜代, 近藤明子, 原田萌香, 上田咲子, 須藤紀子, 金谷泰宏, 下浦佳之, 中久木康一
    • 雑誌名

      日本摂食嚥下リハビリテーション学会誌

      巻: 21 ページ: 191-199

    • 査読あり
  • [学会発表] 大規模災害時多職種による 情報共有基盤の構築:高汎用性ラピッドアセスメントシートの開発2018

    • 著者名/発表者名
      原田奈穂子, 笠岡(坪山)宜代, 久保達彦, 中久木康一, 市川学, 金谷泰宏
    • 学会等名
      第23回 日本集団災害医学会
  • [学会発表] 特別テーマ講演「災害時における子どもの栄養問題と災害支援栄養士JDA-DAT」2018

    • 著者名/発表者名
      笠岡(坪山)宜代
    • 学会等名
      第15回日本小児栄養研究会
    • 招待講演
  • [学会発表] 避難所での食・栄養問題と災害支援栄養士JDA-DAT2018

    • 著者名/発表者名
      笠岡(坪山)宜代
    • 学会等名
      第3回避難所・避難生活学会
  • [学会発表] 災害時は健康・栄養問題の縮図2018

    • 著者名/発表者名
      笠岡(坪山)宜代
    • 学会等名
      第4回日本栄養改善学会 関東甲信越支部 学術総会
    • 招待講演
  • [学会発表] 災害時における栄養スコア法の検討 ~食事摂取基準を活用した食事提供状況評価~2017

    • 著者名/発表者名
      .原田萌香、笠岡(坪山)宜代、瀧沢あす香、瀧本秀美、岡純
    • 学会等名
      第71回日本栄養・食糧学会大会
  • [学会発表] シンポジウム:「東日本大震災、常総市水害、熊本地震での栄養支援から見えてきた未来」2017

    • 著者名/発表者名
      笠岡(坪山)宜代
    • 学会等名
      第5回日本災害食学会大会
    • 招待講演
  • [学会発表] 「災害時におけるJDA-DATの活動 ~あのとき何をしたか・これから何をすべきか~」2017

    • 著者名/発表者名
      笠岡(坪山)宜代
    • 学会等名
      全国栄養士大会
    • 招待講演
  • [学会発表] 学会賞受賞講演:「災害栄養に関する研究」2017

    • 著者名/発表者名
      笠岡(坪山)宜代
    • 学会等名
      第64回 日本栄養改善学会学術総会
    • 招待講演
  • [学会発表] 東日本大震災の避難所を対象とした炊き出し実施に関する解析~外部支援の状況~2017

    • 著者名/発表者名
      原田 萌香、岡 純、笠岡(坪山) 宜代
    • 学会等名
      第64回 日本栄養改善学会学術総会
  • [学会発表] 「東日本大震災における口腔保健問題 「食べる」についての質的分析」2017

    • 著者名/発表者名
      笠岡(坪山)宜代、近藤明 、原田萌香、須藤紀子、下浦佳之
    • 学会等名
      第64回 日本栄養改善学会学術総会
  • [学会発表] シンポジウム:「災害支援 日本摂食嚥下リハ学会に求めること 栄養支援から見えてきた課題 ~災害支援栄養士JDA-DAT~」2017

    • 著者名/発表者名
      笠岡(坪山)宜代
    • 学会等名
      第23回日本摂食嚥下リハビリテーション学会学術大会
    • 招待講演
  • [学会発表] 「What foods were insufficient after the Great East Japan Earthquake?」2017

    • 著者名/発表者名
      Nobuyo Tsuboyama-Kasaoka, Kazuko Ishikawa-Takata, Yoshiyuki Shimoura
    • 学会等名
      21st International Congress of Nutrition
    • 国際学会
  • [図書] 災害時における食物アレルギーへの対応2018

    • 著者名/発表者名
      笠岡(坪山)宜代
    • 総ページ数
      3
    • 出版者
      日本栄養士会雑誌
  • [図書] 災害歯科医学 災害時の栄養と歯科保健2018

    • 著者名/発表者名
      笠岡(坪山)宜代
    • 総ページ数
      4
    • 出版者
      医歯薬出版株式会社
  • [図書] 災害時の栄養 管理栄養士養成課程におけるモデルコアカリキュラム準拠 第3巻 「応用栄養学 ライフステージ別・環境別」2018

    • 著者名/発表者名
      笠岡(坪山)宜代
    • 総ページ数
      5
    • 出版者
      医歯薬出版社
  • [図書] エビデンスベースの災害栄養支援2017

    • 著者名/発表者名
      笠岡(坪山)宜代
    • 総ページ数
      4
    • 出版者
      地域保健

URL: 

公開日: 2018-12-17  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi