研究実績の概要 |
過去の災害における食・栄養の課題の多くが、繰り返し生じている。本研究では、災害時の食・栄養ニーズ、課題を明らかにし、より包括的な支援体制を構築することが目的である。 最終年度である今年度は、災害時要配慮者の支援ニーズ、支援者側の実態に着目して検討を行った。 ・災害時要配慮者(災害弱者)に焦点をあて、発災後のどの時期にどのような食支援が必要な要配慮者がいたのか調査した。東日本大震災の被災3県(岩手、宮城、福島)に在住する日本栄養士会会員1,991名を対象に、郵送による質問紙調査を実施した(回答数435)。このうち、把握した要配慮者の種類について、4つのフェーズに分けて、集計した。避難所において発災初期に把握できた要配慮者は、乳幼児が最も多く、次いで高齢者、授乳婦であった。発災から時期が経過するに伴い、糖尿病患者、高血圧患者などの把握数が増加した。個人宅においては、どの時期においても最も多く把握された要配慮者は高齢者だった。 ・災害時に派遣された災害支援者1400名を対象としてオンライン調査を行った。災害支援者が考える食事への考え方は、避難者のための食事と支援者のための食事で意識が異なっていた。避難者のための食事を「後回しでよい」と考えていた支援者は12.7%であったが、支援者のための食事を「後回しでよい」と考えていたのは27.5%であった。同様に避難者の食事に比べ、支援者の食事は「我慢するもの」「最低限でいい」と考えている者が多かった。避難者だけでなく災害支援者の食事の重要性も伝えていく必要が考えられた。 これらを含め本研究で得られたエビデンスを様々なガイドラインやツールに反映させた。また、様々な職種が行う災害支援プログラム等にエビデンスに基づいた食事・栄養の重要性を組み込み災害時の食・栄養支援体制を強化した。
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