研究課題
慢性腎臓病(CKD)は、腎臓の機能が低下する疾患である。患者数は世界的に増加し、国内でもすでに1,300万人を超えていることから、新たな国民病とも呼ばれている。この疾患が進行すると、浮腫、顕著な高血圧、肺水腫、うっ血性心不全、尿毒症等の症状が現れる。しかし、現時点ではこの疾患本体を治療することは困難であるため、進行予防を目的とした対症療法や透析等が主な治療となっているのが現状である。したがって近年、新規予防法・治療法開発の期待が高まっている。そこで本研究では、抗炎症、抗酸化ストレス作用を有するオメガ-3多価不飽和脂肪酸(ω-3 PUFA)に注目した。炎症性疾患の一種であるCKDに対して予防・治療効果を有する可能性が高いと考えられるからである。本研究では、食塩感受性高血圧誘発CKDモデル動物を用いた。食塩感受性高血圧は、腎臓でのナトリウム排出機能障害による高血圧で、CKDを誘導する疾患の一種である。また、日本人の高血圧症例の30~50%を占めると言われている。この疾患モデル動物を用いて腎障害に対するω-3 PUFA であるエイコサペンタエン酸(EPA)摂取の作用メカニズムの解明を行い、新規予防法を開発し、国民の健康維持や医療行政に貢献することを目的とした。平成27年度は、1)以前行った予備実験のデータ解析、2)実験準備、3)関連研究の成果発表を行った。1)では、適切な実験条件の設定のため、モデル動物作製方法や投与物質であるEPA用量を確認した。2)では、使用する機器、試薬、消耗品等の準備を行い、現在も進行中である。3)については、以下に示すように関連研究の一部をまとめ、学会および論文発表を行った。
3: やや遅れている
今年度は、予備実験のデータ解析、実験準備、関連研究の成果発表を行うのみで、新たな実験実施に至らなかった。その原因として、動物実験講習会の受講が遅れたこと、機器、試薬等の消耗品の準備に時間を要したことが挙げられる。しかし、すでに講習会を受講し、実験に必要な環境・試薬等の準備も整いつつあるので(現在進行中)、来年度以降、疾患モデル動物を作製して実験を開始する予定である。
より効率よく実験を進め、やや遅れている進捗状況を改善させ、研究全体を計画通りに推進する。
所属機関が変わって研究環境整備に時間を要し、研究の開始が遅れたことにより、予定していた予算を執行できなかったため。
平成27年度の研究内容を平成28および29年度に実施するため、この期間に予算執行する予定である。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (5件)
Curr Neuropharmacol
巻: 13 ページ: 776-785
10.2174/1570159X
Br J Nutr
巻: 114 ページ: 734-745
10.1017/S000711451500224X