研究課題/領域番号 |
15K00874
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
三宅 映己 愛媛大学, 医学部附属病院, 講師 (80573659)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | トランス脂肪酸 |
研究実績の概要 |
近年、急増している生活習慣病の発症原因の一つとして食習慣が挙げられる。脂肪の過剰摂取による脂肪毒性は、膵臓でのインスリン分泌の低下や、肝臓、骨格筋、脂肪組織での脂肪蓄積やインスリン抵抗性を誘導する。申請者らは、これまで高脂肪食誘導非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)マウスを用いて研究を行ってきた。この実験過程で長期間の高脂肪食を用いた飼育により、50%以上のマウスの肝臓で発癌がみられ、高脂肪食摂取が発癌に関与することを確認した。次に、この結果をもとに高脂肪食の脂肪酸組成に注目し、トランス脂肪酸、パルミチン酸、オレイン酸高含有高脂肪食をそれぞれマウスに給餌し、肝臓に及ぼす影響について検討した。その結果トランス脂肪酸高含有高脂肪食群では、体重増加は他の群とほぼ同等であるが、肝臓内での脂肪蓄積量の増加と肝炎・肝線維化の増悪がみられ、肝発癌率の増加が確認された。そのメカニズムの一つとして他の脂肪酸に比較しトランス脂肪酸高含有高脂肪食が、肝臓でのfatty acid synthase(FAS)の発現増加を介した脂肪酸合成とGlycerol-3-phosphate acyltransferase1(GPAT1)の発現増加を介した脂肪酸蓄積を促進し、脂肪肝を悪化させること見出した。さらに、肝臓内の脂肪蓄積はω酸化を誘導し酸化ストレスを亢進させ発癌に寄与するという脂肪酸代謝による新規の肝発癌メカニズムを明らかにした。また、トランス脂肪酸高含有高脂肪食群では肝臓内への炎症性マクロファージの浸潤の亢進とそれに伴うNADPH oxidase(NOX) 2を介した酸化ストレス産生の増強も確認されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
結果の解析過程で、肝臓での脂肪蓄積を制御しているGPAT-1は、肝臓からの脂肪放出を低下させ、内臓脂肪での脂肪蓄積を抑制する働きがあることが明らかとなった。これらの結果から、肝臓での炎症や線維化の原因は内臓脂肪からの影響というよりは、肝臓自体の脂質代謝が原因である可能性が示唆されている。現在、GPAT-1遺伝子を抑制knockoutすることにより、GPAT-1が肝臓と内臓脂肪組織へ及ぼす影響の確認実験を、培養細胞マウスを用いて行っているた。そのため、やや実験が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
トランス脂肪酸による肝臓と内臓脂肪への影響が、GPAT-1遺伝子であることを解明したのちに、免疫細胞と星細胞での実験を行う予定である。実験の方法については、星細胞の研究を専門的に行っている当教室の研究者に協力を依頼する。
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次年度使用額が生じた理由 |
結果の解析過程で追加実験が必要となり、実験の進行がやや遅れている。そのため次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
餌代、培養関連試薬や抗体など実験の物品を購入予定。
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