研究課題
近年、急増している生活習慣病の発症原因の一つとして食習慣が挙げられる。脂肪の過剰摂取による脂肪毒性は、膵臓でのインスリン分泌の低下や、肝臓、骨格筋、脂肪組織での脂肪蓄積やインスリン抵抗性を誘導する。申請者らは、これまで高脂肪食誘導非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)マウスを用いて研究を行ってきた。この実験過程で長期間の高脂肪食を用いた飼育により、50%以上のマウスの肝臓で発癌がみられ、高脂肪食摂取が発癌に関与することを確認した。次に、この結果をもとに高脂肪食の脂肪酸組成に注目し、トランス脂肪酸、パルミチン酸、オレイン酸高含有高脂肪食をそれぞれマウスに給餌し、肝臓に及ぼす影響について検討した。その結果トランス脂肪酸高含有高脂肪食群では、体重増加は他の群とほぼ同等であるが、肝臓内での脂肪蓄積量の増加と肝炎・肝線維化の増悪がみられ、肝発癌率の増加が確認された。そのメカニズムの一つとして他の脂肪酸に比較しトランス脂肪酸高含有高脂肪食が、肝臓でのfatty acid synthase(FAS)の発現増加を介した脂肪酸合成とGlycerol-3-phosphate acyltransferase1(GPAT1)の発現増加を介した脂肪酸蓄積を促進し、脂肪肝を悪化させること見出した。さらに、肝臓内の脂肪蓄積はω酸化を誘導し酸化ストレスを亢進させ発癌に寄与するという脂肪酸代謝による新規の肝発癌メカニズムを明らかにした。また、トランス脂肪酸高含有高脂肪食群では肝臓内への炎症性マクロファージの浸潤の亢進とそれに伴うNADPH oxidase(NOX) 2を介した酸化ストレス産生の増強も確認された。一方で内臓脂肪では、トランス脂肪酸高含有高脂肪食群では脂肪量の減少と炎症細胞浸潤の低下がみられ、耐糖能異常や脂質異常症い影響を及ぼしていることが確認された。
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巻: 印刷中 ページ: -
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