アミノ酸成分表2015年版(収載数1558食品)の最大の特徴は、アミノ酸成分表2010(収載数337食品)からの収載食品数の増加である。しかし、この増加の内訳は、新規のアミノ酸分析値は少数(約230食品)であり、海外の成分表や類似食品からの推計値が多数(約1000食品)を占めているのが現状である。アミノ酸成分表2015年版の改訂によって、我が国でも食事から日常的に摂取するアミノ酸量を栄養価計算から推し量るための基盤が構築されたところであるが、その妥当性の検証は不十分であった。そこで、本研究では化学分析の観点から、アミノ酸成分表2015年版を用いた栄養価計算の妥当性の評価を行った。 ①アミノ酸分析:文部科学省資源調査分科会の報告書を参照し、3種類加水分解法(酸加水分解法・アルカリ加水分解法・過ぎ酸酸化法)と3種類のHPLC分析法により、アミノ酸分析を行った。アミノ酸分析の精度(変動係数)と正確度(誤差率)は、BSA(アミノ酸配列既知の理論値)と脱脂粉乳(アミノ酸成分表の収載値)の分析値から評価した。 ②試料の調整:分析試料は高齢者福祉施設の給食(14日分)を用いた。文部科学省資源調査分科会の報告書には、アミノ酸分析の前処理法は未記載である。そこで、分析試料への脱脂粉乳の添加回収実験により、前処理法(乾燥・脱脂・微粉末化)を検討した。 添加回収実験により、アミノ酸分析の前処理条件を検討したところ、熱風乾燥法を凍結乾燥法に変更することで、一部のアミノ酸の回収率の低下を改善することができた。アミノ酸成分表2015年版を用いた栄養価計算値と分析値(アミノ酸分析)に高い一致度が認められた。これらの結果から、アミノ酸成分表2015年版を用いた栄養価計算の妥当性を検証することができた。
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