研究課題/領域番号 |
15K00881
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
由田 克士 大阪市立大学, 大学院生活科学研究科, 教授 (60299245)
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研究分担者 |
福村 智恵 (荻布智恵) 大阪市立大学, 大学院生活科学研究科, 准教授 (80336792)
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研究期間 (年度) |
2015-10-21 – 2018-03-31
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キーワード | 低出生体重児 / 公衆栄養施策 / 健康増進施策 / 食育 / 母子健康手帳 / 生活習慣 / 栄養法 |
研究実績の概要 |
わが国では、母子保健法等の規定により、妊娠時ならびに出産後は、住所地の行政機関により、健診が実施されることになっている。しかし、本邦における低出生体重児の出生率はこの40年で5%程度から10%弱に増加していることから、必ずしも十分な対応ができているとは言い難い。そこで、地域に根ざした公衆栄養施策や健康増進施策の構築に必要な科学的根拠の蓄積を目的に、4か所の自治体に母子を対象としたコホートを立ちあげ、関連するデータ蓄積を継続している。平成28年度は第63回日本栄養改善学会学術総会において6演題の発表を行った。また、低出生体重児の出生率が全国でも上位に位置する沖縄県の自治体対象者に対して、これまでに得られた知見について、伝達する機会も得ている。 本研究より、新たに得られた主な成績は以下のとおりである。 母親の妊娠前からの生活習慣や食生活状況が、児の生後1か月時点での栄養方法(母乳栄養、混合栄養、人工栄養)に関連していることが認められた。これまでにも喫煙習慣のある母親については、児の出生体重が低値となることが知られているが、さらにその後の児の栄養素摂取にも影響を及ぼすことが危惧された。 一方、母親本人が「果物を積極的に摂取している」と回答している児は、そうではないと回答した母親の児に比べ、1歳6か月健診時点の身長と出生時からの体重増加量は高値を示ていた。さらに「食塩を控えている」と回答した母親の児も、そうではない児に比べ、出生時からの体重増加量は高値を示した。 このように、妊娠前から出産後に至る母親の食習慣や生活習慣の良否は、環境要因として、出生体重やその後の成長・発達に強く影響を与える可能があると考察された。今後、追跡を継続し、効果的な公衆栄養施策立案のための科学的根拠の蓄積を展開する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
協力自治体の都合等により、コホートの立ちあげ時期に差が生じていることにより、現時点で得られているデータに同機は取れていない。このため、現状は主として、各地域ごとでの横断的な解析を中心に検討を行っている。 しかし、何れの自治体とも、予定通り順調に調査は進行しており、一定の期間ごとにデータベースを整備できている。 これらのことから、現在までの進捗状況は概ね順調に進展していると判断される。
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今後の研究の推進方策 |
データベースの整備・確定ができた部分から、各種の交絡因子を考慮しつつ、母親の食事状況や生活習慣と児の出生時体重やその後の成長・発達について、可能な限り詳細な検討を行う予定である。また、引き続き、学会等での発表を行うとともに、論文作成も目差したい。 一方、当初の計画には含まれていなかったが、産院ベースでの関連調査、あるいは、児の栄養素等摂取状況や食品群別摂取量を調査し、母子健康手帳や自治体に残されている関連データ等とのリンケージによる調査・検討について、実施可能性を探り、対応できるようであれば実施したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
この申請は、年度後半となって内定の連絡を受けている。このため、申請時と異なる対応となっている。
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次年度使用額の使用計画 |
今後の進捗状況にもよるが、研究期間の延長も視野に入れ、研究費の有効な活用を検討する。
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