研究課題/領域番号 |
15K00882
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研究機関 | 名古屋女子大学 |
研究代表者 |
澤田 樹美 名古屋女子大学, 家政学部, 講師 (30727582)
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研究分担者 |
大田 えりか 聖路加国際大学, 大学院看護学研究科, 教授 (40625216)
森 臨太郎 国立研究開発法人国立成育医療研究センター, 政策科学研究部, 部長 (70506097)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 食環境 / インセンティブ / システマティックレビュー / 栄養教育 / 職域 |
研究実績の概要 |
肥満や過体重は2型糖尿病、高血圧や他の肥満疾患のリスクを増加させることが知られている。我が国においては勤労者世代の男性に肥満者が多く、生活習慣病予防の一環として、近年メタボリックシンドロームの予防やその対策が注目されている。 職場における食環境(従業員食堂、自動販売機、売店等)の改善は、勤労者世代の疾病の改善や、肥満予防のポピュレーションアプローチとして重要視されており海外では価格戦略におけるインセンティブを活用した行動変容の取り組みや政策が行われている。 よって、今後、インセンティブを活用したプログラムを構築するための基礎分析の一部として、コクラン共同計画の手法を用いたシステマティックレビューを実施した。研究デザインはRCTのみとし、得られた試験のRisk of biasおよびGrade評価も取り入れて分析した。その結果、5研究においてRCTの取り組みが報告されていたが、学生を含む対象者と運動介入を含むプログラムはプロトコルに準拠して除外し、最終的には3研究のRCTを採択した。その結果、価格戦略などのインセンティブを用いた食環境介入は生化学的データや身体指標のアウトカムの指標は存在したものの、コントロール群との差や割合を測定した前向きなエビデンスは明確ではなかったが、一方では食物摂取行動に影響を及ぼすことが確認できた。Risk of bias(低い、中程度、高い)の結果は、殆どの試験において中程度および高いバイアスのリスクと判断された。本研究においては、食行動における前向きな指標を確認することはできたが、質の高いデザインの試験が少なく今後もさらなる検証が必要とされる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究目的1(分析1)によるインセンティブを活用した食環境プログラム開発のためのシステマティックレビューについては、レビューメンバーを増加したことから、プロトコルに準拠して精力的に推進し結果を集約することができた。収集したエビデンを基に、Risk of biasを行い、また指定アウトカムに対するGrade評価の解析も行った。 研究目的3(分析3)のフィールドの交渉は平成28年度に調整ができた。フィールドでの取り組みに関しては、食堂を設置する企業と連携をしながら現状把握も含め推進中である。異なる組織との連携が必要であることから、推進においては時間を要しており、平成28年度は食環境づくりの新メニュー開発を先に着手したいとの要望がフィールド側から出ている。よって当初予定のプレ調査はその後に実施する事にし、その代わりとして、モデリング分析を行い、分析2)から得られた食物摂取と生活習慣病のリスクとのシュミレーションを本研究手法に詳しい研究分担者を投入し推進する。同時に、研究目的2(分析2)の食物摂取と体重増加のさらなる分析を継続している。 平成28年度は、勤労者世代のインセンティブを活用した食環境介入の食物摂取行動の結果をコクランシステマティックレビューの手法を用いて実施できたことから、系統的レビューのゴールドスタンダードと言われている国際会議(Cochrane Colloquium)にて10月に発表をすることができた。その後、発表内容を主要な国際学術雑誌に論文投稿することができた。よって推進の前後移動はあるものの概ね順調である。
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今後の研究の推進方策 |
職域におけるインセンティブを活用した食環境プログラムの効果のシステマティックレビューを実施し、エビデンスの質の分析を終え現在国際学術雑誌に投稿中であり、次年度の掲載を予定している。 また、既存データを使用した体重増加と食物摂取要因の分析2)については、引き続きさらなる分析を行い、得られた結果を学術雑誌に投稿する。 さらに、フィールドでのプレ調査は次年度に遂行することから、分析2)の結果で得られた食物摂取(野菜・果物等)と疾病とのシュミレーション研究や試算を行い、プログラム開発のエビデンスの構築を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度の研究成果は論文化し主要な国際雑誌に投稿していが、投稿のための諸費用や本年度の調査費用は年度を越えて推進するため次年度に使用する。また本年度の成果発表をした国際会議の開催場が隣国であったため、本年度の予定額を繰り越すこととなったが、シュミレーション研究の追加や2次解析のさらなる分析を開始しているため、それらの成果を次年に発信する予定であり、その分の諸費用として充てる計画である。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度の研究費使用計画は、フィールドの現場で使用する教材や調査費用・研究推進補助の人件費、解析用のソフトが必要である。 また、分担研究者との研究ディスカションおよびデータベースを使用するための交通費、論文執筆にかかわる英文校正等と投稿費、学会発表の費用等に使用する予定である。
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