①コーヒーの抗肥満効果の分子機構の解明:多くの疫学調査により、習慣的なコーヒー摂取が、肥満や肥満に関連して生じる生活習慣病の発症リスクを低下させる可能性が報告されている。我々は、コーヒー豆抽出液は、インスリンシグナル経路を阻害することにより、肥満の要因である脂肪細胞の分化を抑制することを報告している。前駆肥満細胞3T3-L1において、コーヒー豆抽出液が、インスリンシグナルの重要なアダプター分子であるIRS1タンパク質の発現を低下させることを見出した。解析の結果、コーヒーの焙煎成分が、プロテアソームによるIRS1分子の分解を促進していることが明らかとなった。今後は、コーヒー豆抽出液によるIRS1の分解促進の分子機構および成分の同定を進める。 ②コーヒー成分による敗血症に対する症状改善の分子メカニズムの解明:敗血症では、病原体成分であるLPSにより活性化されたマクロファージにより、炎症性メディエーターが過剰に産生されることが知られている。これまでに、コーヒー豆抽出液が、LPS刺激によるマクロファージからの炎症性メディエーターの産生を抑制することを明らかにした。この抑制効果は、コーヒー焙煎成分による転写因子Nrf2の活性化によることを見出した。この活性化はNrf2の151番のシステインが関与すること、さらに、コーヒーの焙煎成分のうち、カテコール類が関与することを明らかにした。 ③コーヒー摂取による認知症予防効果の解析:コーヒー成分がヒト神経細胞SH-SY5Yにおけるアミロイドβ(Aβ)産生を抑制することを見出し、それが、Aβ産生の律速酵素β‐セクレターゼ(BACE1)の分解促進によることを発見した。さらに、BACE1の分解は、コーヒーの焙煎成分によるプロテアソームサブユニットのセリンのリン酸化による活性化によるものであることを明らかにした。
|