研究課題/領域番号 |
15K00885
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研究機関 | 大東文化大学 |
研究代表者 |
蕪木 智子 大東文化大学, スポーツ健康科学部, 准教授 (40339479)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 低糖質食 / 中鎖脂肪酸 / ケトン体 / 脂肪 / 糖転移酵素 |
研究実績の概要 |
これまで、低糖質食(LC食)は血糖値を抑制し、AGEs生成を抑えるとの考えから、糖尿病、動脈硬化などの生活習慣病予防に有効であるとの報告が多くなされてきた。しかしLC食では脂肪摂取量の増加や糖質不足による脂肪酸β酸化の促進から、ケトン体生成や酸化ストレス増大が終末糖化産物(AGEs)生成を誘発する可能性も推測される。よって本研究では、LC食およびケトン体生成が増大する中鎖脂肪酸LC食(MCT-LC)がAGEs生成や生活習慣病発症に与える影響を検討し、その安全性について解析することを目的とした。今年度はLC食および中鎖脂肪酸LC食の短期的摂取による、生体内ケトン体およびAGEs生成への影響を検討した。 6週齢C57BL6/JマウスにControl食 (糖質60%、大豆油20%)、LC食(糖質20%、大豆油20%、ラード25%)、MCT-LC食(糖質20%、大豆油20%、MCT油25%)をそれぞれ2週間自由摂取させ解剖を行った。MCT-LC食はLC食に比し血糖値上昇の抑制効果が確認されたが、体重や内臓脂肪抑制については有意な影響が認められなかった。ケトン体、AGEsについては、測定手技の確立が必要であり、動脈硬化への影響については今後さらなる検討が必要である。一方、精巣上体脂肪組織においてLC群で有意に減少する糖転移酵素のmRNAがいくつか発見された。糖転移酵素はたんぱく質の糖鎖付加を調節し様々な生体機能調節に重要な役割を果たす。今後は、LC食およびMCT-LC食のAGEs生成を含めた動脈硬化への影響に加え、糖転移酵素の活性低下との関連についても解析を進める予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
LC食では血中ケトン体が高値となることが予想されたが、実験飼料組成(糖質・脂質含有量)や絶食時間等が影響し、有意な変化を得ることが出来なかった。またAGEs測定については個体差が大きく、安定した測定手技を得るのに時間を費やしたことも、予定よりも実験計画を遅らせている。一方で、内臓脂肪において発見された糖転移酵素発現低下は興味深く、今後検討を進めていきたいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
LC食およびMCT-LC食によるケトン体生成への影響を解析するため、時間軸を追った血中ケトン体の測定を行い、絶食後に血中ケトン体がピークとなる時間を検討する。さらに、LC食およびMCT-LC食の短期および長期的摂取による変化について比較検討を行なう。 また、AGEsの測定については、安定した測定方法を検討し、LC食およびMCT-LC食による影響を解析する。 一方で、H27年度に発見されたLC食マウスの精巣上体脂肪組織においてmRNAが有意に減少した糖転移酵素が、アディポサイトカイン産生や糖代謝等影響する可能性があり、それら項目が動脈硬化に与える影響についても解析を進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度は当初計画に加え、内臓脂肪の糖移転酵素発現低下について実験を実施することに伴い、予算確保のため次年度に繰り越すこととした。
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次年度使用額の使用計画 |
糖転移酵素の解析に向けた、mRNA解析用試薬、抗体、その他必要な消耗品を購入する予定である。
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