食事療法として注目される低糖質食(LC食)の生体への安全性については不明な点が多く、特に非肥満状態での影響については充分な検討がなされていない。よって本研究では、非肥満状態でのLC食の摂取が、生体に与える影響を検討することを目的とし研究を行った。H26、27年度はLC食および中鎖脂肪酸含有LC食(MCT-LC食)の短期的および長期的摂取の影響について、体重変化、内臓脂肪蓄積量、腎臓について検討を行った。その結果、LC食では体重抑制および内臓脂肪蓄積量に有意な効果を認めなかった。一方でMCT-LC食は、内臓脂肪蓄積に対し長期的な抑制効果が認めた。また、LC食、MCT-LC食では糸球体小血管の肥大および硝子化を伴う腎臓の増大化が示された。 本年度(H28)は、前年度で変化が認められた腎臓および脂肪組織の機能変化について、糖化最終産物(AGEs)生成を含め、さらに詳細に組織学的解析を行った。腎臓のAGEs生成量は、N-epsilon-(carboxyethyl)lysineはMCT-LC食で低下し、N-epsilon-(carboxymethyl)lysineはLC食による著しい低下が見られた。内臓脂肪組織(副睾丸周囲脂肪組織)の脂肪細胞では、LC食で肥大傾向がみられると同時にアディポサイトカイン分泌についても変化を認めた。 以上の結果より、非肥満状態でのLC食の長期的摂取は、体重や内臓脂肪蓄積には抑制効果は認められず、腎臓では組織的変化やAGEs生成変化から腎機能を低下させる可能性が示された。一方で、LC食と同時に中鎖脂肪酸を同時摂取することで、非肥満状態においても長期的な内臓脂肪の蓄積抑制効果をもたらす可能性が示された。
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