研究課題
本研究は社会心理学と情報工学の分野横断研究により、食事内容が対人コミュニケーションに及ぼす効果を実験的に解明することを目的として実験・調査を実施している。H27年度は研究課題の1つである「食事中および食後の会話の性質の解明」に向けてデータ収集および解析、成果の一部の外部公表を行った。この実験では、相手と親密になる上で重要な「自己開示」に焦点をあて、友人同士2名での食事中および食後の会話の中でどのような自己開示がなされるかを検討したものである。食事はカレーとサラダ、スープとし、カレーは3種類の中から実験協力者が任意に選択できるようにした。この食事中・食後会話の様子をビデオ録画して解析したところ、食事の有無で自己開示の総量には差がみられないが、食事がある場合には2名の間で頻繁な自己開示の交代が行われていることが統計的に示された。また、研究課題を進めるにあたり「食の社会心理学」に関する文献の整理および今後の課題の抽出を行った。その成果の一部を分担執筆中の書籍にまとめている (担当章の原稿は提出済, H28年内には出版予定)。
2: おおむね順調に進展している
年度当初に記載した研究計画に基づき、共食コミュニケーションに関する研究を推進している。ただし、当初は調査1「SNSにおける食写真コミュニケーションの実態と動機に関する調査」、調査2「食事中および食後の会話の性質の解明」の順に実施する予定であったが、調査2のデータが順調に収集できてきたため、調査2の解析を優先して実施した。さらに、研究テーマと関連する学術図書執筆の依頼があったことから、本研究の位置づけを明確にする上で従来研究の外観および今後必要となる研究について執筆を行った。そのため、全体としては初年時の成果として順調なレベルといえるが、上述の理由により一部実施順序が前後したことを考慮し、標記の区分とした。
H27に実施した「食事中および食後の会話の性質の解明」については当初の想定以上に興味深い知見が得られており、今後食事内容と会話との関連や、自己開示前後の食事動作などとの関連を詳細に検討する予定である。成果の一部はすでに学会発表しているが、今後は論文化を進める。また、「SNSにおける食写真コミュニケーションの実態と動機に関する調査」については、調査項目の選定は進んでおり、確定した段階で速やかにWEB調査を実施する。さらに、今後は食品内容や食器種類といった料理の各属性が共食時のコミュニケーションに及ぼす影響を実験により検討する予定である。
前述のとおり調査2の推進、および本研究に関わる書籍執筆を優先したことから、調査1のWEB調査実施を次年度に見送ることとしたため。
H27年度残額については、前述の「今後の研究の推進方策」に基づいてH28年度内にWEB調査を実施する。
すべて 2016 2015
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情報処理学会論文誌
巻: 57 ページ: 218-227
日本官能評価学会誌
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Food Policy
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巻: LNCS9334 ページ: 219-231
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