昨年まで、コレラトキシン(CT)のマウスへの経口投与は、腸管上皮の細胞死とHMGB1の放出を促すこと、および放出されたHMGB1は腸管樹状細胞(DC)を活性化し、食物アレルギーを誘導することを明らかにした。今年度は、HMGB1がどのように消化管粘膜DCを活性化するのか調べた。 HMGB1は細胞上のToll like receptor (TLR) 2、TLR4、終末糖化産物レセプター (RAGE)に結合し、細胞に活性化シグナルを伝達する。マウス消化管粘膜細胞を採取し、各HMGB1レセプターの発現を調べたところ、CD11chiCD64- DCはRAGEおよびTLR2を発現していたが、TLR4の発現は見られなかった。これらCD11chiCD64- DCのうち、CD8+XCR1+ cDC1とCD11b+SIRPα+ cDC2の両方がRAGEとTLR2を発現していた。 さらにCTによるHMGB1放出後、消化管粘膜のCD8+XCR1+ cDC1とCD11b+SIRPα+ cDC2のいずれにおいても共刺激分子CD80とCD86の発現が増加した。これら両DCサブタイプの活性化は、HMGB1がRAGEとTLR2に結合することによって起こる可能性が示唆された。 また、OVAとCT経口投与の際にHMGB1阻害剤であるグリチルリチンを静脈または経口投与したところ、糞中HMGB1放出、消化管DC活性化、糞便中抗OVA IgAなど消化管局所反応の有意な抑制がみられたほか、マウス耳皮内へのOVA注入時の遅延型過敏反応も有意に抑制された。 以上の結果より、CTのような細菌外毒素によって損傷した腸管上皮細胞から放出されるHMGB1は、粘膜DC上のRAGEやTLR2といったレセプターに結合してDCを活性化し、消化管局所のみならず皮膚においても食物抗原に対するアレルギー反応の誘導に関与する可能性が示唆された。
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