研究課題/領域番号 |
15K00897
|
研究機関 | 同志社女子大学 |
研究代表者 |
小切間 美保 同志社女子大学, 生活科学部, 教授 (30269849)
|
研究分担者 |
吉本 優子 京都府立大学, 生命環境科学研究科, 准教授 (40255914)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 小学生 / 家庭での調理経験 / 食事観 / 自尊感情 / 教科に対する関心 / 朝食 |
研究実績の概要 |
今年度は,2つの研究活動を行った。一つは昨年度までの横断研究の結果を精査した。昨年度までに都市部にある3小学校の4~6年生749名に対して,調理経験,食事観(朝食に関する事項含む),自尊感情,学習への関心について尋ねる自記式質問紙調査を行った。そこで,全質問項目に回答した485名の調査結果について探索的因子分析を行った。抽出された因子は,「調理経験」に関する6因子,「食事観」に関する1因子,「自尊感情」に関する4因子,「教科に対する関心」に関する3因子であった。これらの因子を用いて共分散構造分析を行った結果,「調理経験」は「食事観」,「自尊感情」それぞれを介して「教科に対する関心」に影響を及ぼす構造が認められた。原著論文にまとめ現在査読の最終段階である。 もう一つは,介入研究によって上述の構造の信頼性の確認を試みた。介入研究は3校の5年生293名を対象とし,介入校Ⅰ,Ⅱと対照校を設定した。前述の質問紙調査をPre-testとし,介入プログラム終了後にPost-testを実施した。プログラムの内容は,児童に朝食づくりを含む調理を促す教材を配付して家庭での調理行動を促し,長期休暇中には調理記録用紙を配付して一層調理行動を推奨することとした。さらに,介入校Ⅱでは教材を家庭科の副読本として授業でも使用した。介入研究の結果,Pre-testの得点で補正したPost-testの結果を比較すると,介入校Ⅱは他の2校よりも「調理経験」と「食事観」で有意に高値を示した。さらに,「調理経験」得点の変化により,減少群と維持・増加群の2群に分けて比較したところ,維持・増加群は「食事観」,「自尊感情」,「教科に対する関心」において高値であった。すなわち,児童の「調理経験」の増加が,「食事観」「自尊感情」「教科に対する関心」を向上させることが示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該研究課題の研究期間に,横断研究および介入研究の実施を行った。 横断研究の成果を学術論文にまとめたが,2017年9月に開催された日本栄養改善学会学術総会において有意義な議論により分析の追加を行ったことから投稿までに時間がかかり,10月に日本栄養改善学会に論文投稿した。現在査読の最終段階にある。 介入研究の結果は2017年12月に日本栄養改善学会近畿支部会で速報として報告した。さらにデータ分析を行った結果は,2018年9月の日本栄養改善学会学術総会で報告予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
介入研究は小学5年生に対し2年間の計画で実施した。介入1年目の結果は2018年9月に学会発表するため既に演題登録した。介入2年目は計画通り2018年2月に終了し,現在集計中である。分析は概ね順調に進んでおり,結果の公表は2019年度の学会発表で行い,論文投稿する予定である。分析項目に朝食内容の評価を加え,調理行動を促す食育による変化を明らかにしたいと考えている。既に,朝食内容の評価方法を考案して分析を行っている。また,介入前後の変化や介入校による変化の違いなどから,介入プログラムの改良についても検討したいと考えている。
|
次年度使用額が生じた理由 |
研究成果を論文にまとめた内容を,2017年9月に第64回日本栄養改善学会学術総会で発表したところ,解析方法について有意義な指摘を受け論文の改良を行ったため,投稿が予定より遅れた。4月現在,既に最終審査段階になっており,受理の可能性が高い状況にある。それ以外の研究成果についても2017年度の第16回日本栄養改善学会学近畿支部学術総会で2演題発表し,それらの内容についても論文投稿の準備を始めている。以上より,論文投稿にかかる費用として,2018年度に使用させていただきたい。
|