研究実績の概要 |
研究期間の延長が許可されたおかげで,2017年度までの研究成果を,論文にすることができた(栄養学雑誌vol76, No4, 1-12, 2018)。これは,小学生の「調理経験」が「食事観」「自尊感情」に直接影響を及ぼし,間接的に「教科に対する関心」に影響を及ぼすという因果関係モデルを見いだしたという内容であった。今年度はさらに,同じ小学校の異なる年度の5年生を対象に既報のモデルを用いて,年度別2群の多母集団同時分析により再現性を検討した。対象者は近畿圏の3小学校の5年生(2017年度と2018年度)であった。調査方法は自記式質問紙法(4分類76項目)とし,481名から有効回答を得た。共分散構造分析の結果,「調理経験」は「食事観」,「自尊感情」に対して有意なパス係数0.74,0.83(p<0.001)を示し,「自尊感情」は「教科に対する関心」に対して有意なパス係数0.75(p<0.001)を示した。多母集団同時分析の結果,年度別の2群間でパス係数に有意な差はなく,報告した因果関係モデルの再現性を認めた。 並行して介入研究によるこのモデルの検証を行った。対象は某小学校の2016年度の5年生112名を対照群,同小学校の2017年度の5年生114名を介入群であった。介入群にはPre-test後に家庭での調理を促す独自の教材を用いたプログラムを実施し,8か月後にPost-testを実施した。共分散分析により補正後のPost-testの比較を行った結果,介入群の「調理経験」が有意に増加した (p<0.01)。次に児童の調理経験の変化により減少群と維持・増加群で比較したところ,維持・増加群は「食事観」「自尊感情」が有意に高値を示した(p<0.01)。以上より,本介入プログラムが児童の「調理経験」を促し,調理経験の維持・増加による「食事観」「自尊感情」の向上が示唆された。
|