研究課題/領域番号 |
15K00903
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研究機関 | 京都ノートルダム女子大学 |
研究代表者 |
藤原 智子 京都ノートルダム女子大学, 生活福祉文化学部, 教授 (60310744)
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研究分担者 |
中田 理恵子 奈良女子大学, 生活環境科学系, 准教授 (90198119)
藤原 浩 金沢大学, 医学系, 教授 (30252456)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ポスト思春期 / カロリー制限 / 摂食リズム / 卵巣機能 / 妊孕性 |
研究実績の概要 |
現在我が国の若年女性に妊孕性の低下をきたす婦人科疾患の増加が指摘されている。とくに生殖機能が成熟する思春期後の年代(ポスト思春期)における不適切な食生活は、身体機能へ大きな影響を及ぼす可能性があると考えられるとともに、この時期は食生活に変化があることが多く、過度のやせ志向や朝食欠食が社会的に問題視されている。 そこでカロリー制限と摂食リズムが卵巣機能に及ぼす影響を検討する目的で、ポスト思春期モデルの雌性ラットを用いて、カロリー制限下で、活動期と非活動期にそれぞれ給餌した群について、性周期変化、卵巣様態の観察に加え、卵巣、下垂体および視床下部のRNAを抽出し、定量RT-PCR法によって性周期調節に関する遺伝子の発現量解析を行った。さらに制限終了後に自由摂取をさせる回復期を設け、同様の検証を行い、食餌量制限による影響が遺伝子レベルまで記憶されているのかどうかを検討した。 カロリー制限中はいずれの群も、コントロール群と比較して性周期の乱れが観察され、卵巣においてステロイドホルモン合成に関与する遺伝子発現抑制の可能性も示唆された。また、回復期にはいずれも性周期の乱れはなくなり、排卵も再開された。しかし、視床下部におけるGnRHの遺伝子発現量については、活動期に給餌した群では制限期に増加傾向がみられたのに対して、非活動期に給餌した群は制限期の発現量は低下し、回復期になってから増加するといった変化を示し、給餌の時間帯により卵巣機能に対する抑制作用が異なること、またその抑制作用に間脳-下垂体系が関与している可能性が示された。 以上の結果はカロリー制限下においては食事を摂る時間帯が生殖機能抑制の重要な因子であることを示唆しており、近い将来に母性を担う時期にある「ポスト思春期」女性に対する有効な食育プログラムの開発を進める上で意義ある知見といえる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
成人女性の生殖機能の健全性を目指して、性成熟完成期にあたる『ポスト思春期』女性に対する適切な食生活の提言のための知見の収集を目的に、ポスト思春期モデルの雌性ラットによる検証実験を実施し、カロリー制限の時間帯によって遺伝子発現変動に差異があることを明らかにすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
「ポスト思春期」の食生活ラットモデルを用いた検証実験を引き続き行い、カロリー制限下における日常生活と食生活リズムの非同期が誘起する生殖機能障害の詳細な解析と、さらにカロリー制限後の長期的な影響についても検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画では生後8週齢から2週間と4週間に雌ラットに食餌量の制限(50%カット)を施行することとしていた。しかし、予備実験で2週間では制限の影響がほとんどないことが判明したため実験計画を変更した。また、この結果をもとに国際学会での発表も予定していたが、国内での小規模な報告にとどめることとしたため、未使用額が生じた。一方で、体重の変化を測定下に通常の食餌摂取に戻して経過を観察する回復期は4週間と一律に設定していたが、視床下部遺伝子変動の解析より、4週間の回復期間の途中で遺伝子発現量に大きな変化が起こる可能性が示唆され、新たな知見として得ることができた。そこで、本研究目的を遂行するにあたり、本研究分担者と協議した結果、発現量の変化を詳細に検討するため、回復期間を複数期間設定する必要があると判断し、次年度の研究計画に加えることとした。
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次年度使用額の使用計画 |
繰越金は上記の実験と結果の解析を行うための物品の購入に使用する。また、複数の国際学会で研究成果の発表の経費に充てることとしたい。
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