研究実績の概要 |
本研究は、大学教育における災害に関する新たな教養科目の開発・構築を目指すものである。平成30年度は、既存の授業「災害の科学」における授業改善のためのポイントの整理、ならびに被災地訪問による課題発見・解決型のアクティブラーニング型のゼミの継続実施と効果検証を行った。 期間全体を通じて、既存のオムニバス形式の講義型授業においても学生にとって貴重なメリットが存在していること、その一方で授業改善のためのポイントも多数あることが明らかとなった。そして、そのポイントを4つの視点(伝え方、理解の支援方法、学生のモチベーションの維持、雰囲気づくり)で18カテゴリーに分類・集約できた。 一方、被災地訪問を伴うゼミナールも新たな教養科目として位置づけることができた。このゼミでは、学生は多様な専門分野から被災や復興に関する講義を受けた後、東日本大震災の被災地での現場実習を行い、その後、復興に向けての課題と解決策を4~5人のグループで検討し、学習成果を発表する。このゼミによって学生にどのような変化が表れるかを検証した結果、学生の生きる力(災害時の8つの生きる力、Sugiura et al., 2015)が、複数の側面で上昇する傾向を確認できた。さらに、学生の最終レポートから、学生がゼミによって新たな気づきや学習観を獲得したことを垣間見ることができた。たとえば、主体的・能動的な学びや他者と共同することの意義、物事を多角的な視点で見ることの重要性、現場に行って体験することの重要性などが比較的多く言及され、机上での個人学習とは異なる学びの視点を得ているようであった。また、震災や教訓を他地域や次世代へ伝えることの必要性や決意を述べた意見も多く、「社会全体での学習」にまで目が向けられていることが明らかとなった。
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