本研究の目的は、北半球および南半球から見た月の満ち欠けや月の日周運動を同時観察する装置を国内外に設置すること、そしてそれを用いた児童・生徒の科学的理解の向上を図る学習プログラムを完成させることであった。本研究の成果として、以下の3つがあげられる。 第1の研究成果は、20万円程度の低予算で作成可能な月カメラを開発したことである。本研究以前に低予算型の星空カメラを開発していたが、本研究ではワンボードマイコンの主流となっているRaspberry Pi(ラズベリーパイ)を用いることで、遠隔操作をより低予算で実現することができた。 第2の研究成果は、今回開発した月カメラを北半球(秋田大学)および南半球(インドネシア・バリ島)に設置したことである。海外ではインターネット環境が日本国内ほど整備されていない地域が多く、特に南半球地域での設置は難航した。特に固定IPが取得できなかったため大きな困難にぶつかったが、月カメラに追加の仕様変更をおこなうことで、問題を回避した。 第3の研究成果は、南北に設置されている月カメラでの同時観測の結果を用いた教育プログラムの開発である。小学校では「天動説」をもとにした説明が、中学校では「地動説」をもとにした説明にさりげなく変化するのだが、本研究ではこのギャップをなくすような教育プログラムとなるようなものを作った。なお現在は、このプログラムを用いた教育実践を行っており、その結果をいずれ論文としてまとめるつもりである。
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