本研究は、教材・学習材としての”虫の音”を利用して、教育現場への応用を考えるものである。実際に、音源を採取し、それを基に小学校の現場や高校生対象の学習会等の場で利用し、一定の教育効果を得ることができた。その成果の一部は、2019年刊行”昆虫と自然”第12号に”教材・学習材としての「虫の音」の利用として掲載されている。この成果は、主に童謡「虫の音」を利用したものと、セミやコオロギなどの横浜や鎌倉において採取した音源を用いたものに大別され、野外での鳴き声のパターンをまとめた鳴き声カレンダーの利用も含まれる。虫の音がどのように耳に届くか、どういう音として聞こえるかを言語化する活動においては、虫の音の歌詞にあるように聞こえる場合と、全く違って聞こえる場合があるようである。虫の音を用いた教育活動の詳細や方法論は上記の論文に掲載されており、虫の鳴き声をソフトウエアAudacityを用いて音声解析を行う方法なども含まれている。 また、鎌倉市図書館との連携事業で、虫の音を利用した調べ学習と文献調査を実施し、教育効果を検証した。鎌倉市図書館における地域連携事業として高校生対象の講座を開催し、wikipediaに情報を掲載する活動と、そのための文献調査、実際に虫の声がどう聞こえるのか、それを言語化できるのか、そのような研究がされているのか、などの情報をまとめ、web上に掲載することで図書館における文献情報の価値やその利用法までも広く普及できる可能性が示唆された。この活動やその教育効果については、同”昆虫と自然”誌の2020年第1号に”「虫の音」を利用した調べ学習と文献”として掲載されている。 今後の展望として、これまでに得られた音源の有効活用と虫の音を聞いてそれを言語化する活動の推進、それらを基にした身近な昆虫への興味関心の高まりを考慮しつつ、教育現場での実践を続けていきたいと考えている。
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