研究課題/領域番号 |
15K00914
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
藤井 純子 福井大学, 学術研究院教育・人文社会系部門(教員養成), 助手 (50228946)
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研究分担者 |
三好 雅也 福井大学, 学術研究院教育・人文社会系部門(教員養成), 准教授 (50557353)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 地学教育 / 初・中等教育 / 石ころ図鑑 / 教材開発 / 教育実践 |
研究実績の概要 |
本研究では,小中学生にとって身近な「石ころ」の教材化を目指し,海岸ごとの『石ころ図鑑』の作製およびそれを用いた教育手法の開発と実践に取り組んでいる。 平成28年度は,『石ころ図鑑』作製のための福井県内外における礫・砂の調査(試料採取,礫種,構成粒子の分析)および海浜砂を活用した教材・教育手法開発を行った。礫・砂の調査では,昨年度に引き続き福井県嶺北・嶺南地域の海岸の礫浜を中心にデータを得た。県外の調査では,長野県・山梨県において河川礫および湖岸の砂や礫を採取し,標本教材を充実させた。 礫・砂を活用した教材・教育手法開発では,(1)福井県坂井市三国町にある二ノ浜に分布する溶結凝灰岩(赤紫色)と安山岩溶岩(黒色)の礫を活用した野外実習の考案,(2)県内の海浜砂を活用した地層教材および学習プログラムの開発に取り組んだ。(1)は本学附属中学校の野外観察実習の一部であり,生徒が現地で礫種組成調査を行い,データをまとめることで,それらの岩場からの距離と礫種組成との関係を実感する内容である。礫観察のみでなく礫種組成調査を取り入れることで現地の活動を充実させることができ,新しい野外実習の形を提案することができた。(2)は県内5地点の砂浜から採取した特徴の異なる砂を小ボトル中に積み重ねることでミニチュア地層を作るという教材である。この教材を用いた学習プログラムを考案し,主に小学生を対象として科学イベントにおいて実践した。本教材と砂の実体顕微鏡観察を組み合わせることにより,砂および県内の地質に関する児童の興味・関心を引き出すことができた。 上記に加え,福井市内の児童館の科学教室において,児童を対象にパンニングによる砂鉄採集実習を行った。これは前年度同様の実践内容であったが,参加児童の砂に対する興味・関心を引き出すことができ,教育効果を示す実践事例を一つ増やすことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H28年度は,福井県坂井市三国町の二ノ浜において,附属中学校の野外観察実習の一部として周囲の地質と礫浜の礫種構成との関係を調査した。班ごとに礫種調査を行い,データをまとめて,目視で推測した様子を簡単な科学的な調査により数値で確認し,周囲の地質との関連をより明確にするという体験を提供することができた。 また,福井県内の海岸から採取した砂浜の砂は,周囲の地質や浜の環境などにより,それぞれ特徴を持っているが,それらを活用した「大地のボトル」という教材を開発した。本年度は,まず小学校の教育現場に取り込む前段階として,年齢層の幅広い科学イベントにおいて実験的な活動を行った。砂の実体顕微鏡観察とミニチュア地層の作製を組み合わせることにより,砂粒の中に含まれる特徴のある綺麗な砂粒や貝殻片などに興味を持ち,一口に「砂」と言ってもいろいろな砂があることを実感できた様子が見られた。 さらに,福井市内の児童館および子ども歴史文化館の科学教室において,砂鉄あつめの科学イベントを行った。対象はほとんどが低・中学年であったが,「重い黒い砂粒」と「軽い茶色い砂粒」の比重の違いを体験の中で実感しながら砂鉄だけを集めることに熱中していた。子ども歴史文化館では,併せて顕微鏡による砂鉄の観察や磁石遊びなども活動に取り入れたことにより,単に「磁石にくっつく砂」としてだけではなく,重くて黒く光り美しい形を持った砂粒として砂鉄に興味を持ち,保護者も一緒に驚きをもって楽しんで貰うことができた。 これらの実験活動と並行して,『石ころ図鑑』作製の基礎データとしての県内外の礫浜・砂浜・河川等の礫調査も進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
H27年度までの礫浜の調査手法や作製した『石ころ鑑定シート』等をもとに,今後も県内における礫浜の『石ころ図鑑』の作製を進めていく。 H29年度は,同じ礫浜において中学校と小学校の野外観察会が予定されており,小学校低学年(生活科)および中・高学年(理科)と中学校のそれぞれの学習段階や発達段階に合わせた教材開発・観察実習などを提案する。特に,小学校の野外観察会では,周辺の地質を観察しながら現地に向かう予定である事から,周辺の地質(岩石)と礫浜の礫を関連させた観察学習が可能であると考えている。中学校理科教員の中でも地学を専門に研究した教員は少なく,小学校でも理科の教員免許を持つ教員は多くない。『石ころ図鑑』等を活用した野外観察のサポート等の教育実践を学校現場において進めていく予定である。 また,H28年度に福井県内の砂を使った科学イベントを行ったが,参加児童の反応がよく,自然への興味・関心を持つきっかけとなる活動として有効である事がわかったため,礫だけでなく砂についても調査・試料採取等を行い,教材開発を検討する。特に,生活科では理科的な要素が少ないため,教材の一つとして提案できればと考えている。 さらに,福井県内では見られない特徴的な石ころや砂が分布する他地域の礫浜・砂浜における『石ころ図鑑』の作製も行い,児童・生徒の興味・関心をより引き出せる教材としての活用,あるいは授業の内容に直接リンクした活動なども考えていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
H28年度の県外の野外調査の一つに隠岐の島を予定していたが,調査地域を変更したため,旅費に差額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
H29年度に長野県の河川の礫調査および『石ころ図鑑』の作製に使用する予定である。
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