研究課題/領域番号 |
15K00915
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
杉山 文子 京都大学, 工学研究科, 助教 (80162907)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 3Dプリンター / 折紙 / 初等・中等教育 / ものづくり |
研究実績の概要 |
科学技術立国と言われていた日本の地位は年々後退し、学術面でも世界ランキングが下降しつつある。その要因として政府からの大学への交付金の大幅な減額、ゆとり教育の弊害が挙げられている。これらの問題を即座に解決する方法は無く、地道に時間をかけて解決するしかない。解決法の一つとして、初等・中等教育過程の生徒に科学技術の面白さを伝え将来科学技術、学術面で日本を背負って立つような人材を育てることが挙げられる。そこで、科学の面白さを伝えるために折紙を用いた教材開発を行い、技術開発の大切さ、「ものづくり」の面白さを伝えるために3Dプリンターを用いた教材開発を行ってきた。折紙に関しては、教材そのものを取り入れる学校はまだ現れていないが、教育現場においてようやくその有用性が認識され始め、折紙に関する授業を受けたいと言う中学校、高等学校が増え、28年度は20件ほどの模擬授業を行った。 もう一つの命題である「ものづくり」を体験させるための3Dプリンターを用いた教材開発に関しては、困難を極めた。文科省は昨年度までに中学・高等学校にも3Dプリンターを導入する計画を立てていたが、実際にプリンターを導入したのは、機械系、工業系の高等学校数校のみであり、普通科高等学校、中学校にはほとんど導入されていない。そのため、普通科高等学校、中学校、小学校への3Dプリンター導入を大前提として3Dプリンターの使用法及び製作モデルをセットにした教材を作成したが、3Dプリンターを所有する学校が無いため、役立たせることが出来なかった。ただし、プリンター自体は技術の向上により、使い易くなっているため、昨年度作成した仕様書を書き換え、使用条件を緩和したものにした。また、製作モデルには、折紙で作製したソーラーパネルを厚さのあるパネルで作製する方法を示し、自作できるようにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
3Dプリンターの性能はこの1年でかなり向上しており、使い勝手がよくなったので、教材としての指導書を書き直した。また、実際に製作するモデルも生徒が興味を示すと思われる、宇宙関連のモデルとした。この点までは、順調に進捗しているが、教育現場で3Dプリンターを導入しているところがほとんど無く、指導書、製作モデルを提供することが出来なかった。 当初の目標は、指導書を広く公開することであったので、以上の状況より、進捗状況としては、「やや遅れている」とした。
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今後の研究の推進方策 |
3Dプリンターの初等・中等教育現場への導入が遅れている、あるいは、行われない、と言う状況下では3Dプリンターの指導書を教育現場へ広く公開するのは無意味となる。しかし、諸外国における3Dプリンター導入状況を見ると、既に小学校への導入を全面的に行っている国があり、わが国が「ものづくり」で後れを取るのは明らかであるから、教育現場への導入はあきらめ、今後は家庭への導入に切り替える。幸い、3Dプリンターの価格が下がっており、3Dプリンターとセットに考えるとしていた折り紙の普及も進んでいる。このことから、家庭で実現できるモデルを開発し、生徒が一人でも学べ、理系に興味を持ち、自分で考える力をつける教材を提供する。
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次年度使用額が生じた理由 |
申請当初、3Dプリンターが全国の初等・中等教育現場で使用されることを見込んで、各地での講義・講習を行う予定であったが、文科省の方針転換のため全く3Dプリンターが普及せず、出張講義が行えなかったので出張旅費分が余った。
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次年度使用額の使用計画 |
家庭で使える教材開発に方針を変え、昨年度作製した教材をさらに使いやすく、魅力のあるものにするために製作モデルを増やし、また魅力的な書籍を出版する。そのために高度な画像加工ソフト、CADを購入する。また、学校現場ではなく、イベント的な講習会を開催し、できるだけ多くの子供たちに科学技術の魅力を伝える活動をするために、講習会開催費用、出張旅費に助成金を使用する。
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