研究実績の概要 |
2016年6月に,国立A大学附属中等教育学校(学校規模 後期課程:各学年3クラス,計360名),奈良県立B高等学校(学校規模 1年9クラス,2・3年10クラス,計1,160名),奈良県内私立C高等学校(学校規模 1年2コース,2・3年3コース,計480名)の3校の協力を得て,アンケート「教科に関する意識調査」を実施した。3校ともに高1から高3のクラスを抽出し,3校合わせて女子585名,男子548名,合計1133名の回答を得た。 この調査結果から,数学や理科が嫌いな生徒のうち,数学や理科を情緒的であると感じる生徒の割合は男子の方が多い傾向があり,女子生徒を物理の学びに導く可能性のある内容の一端(化粧品,衣類,食事や食物など)が明らかになってきた。そこで,2017年6月に,国立A大学附属中等教育学校の5年生(高2)・6年生(高3)の24人に,「情緒的である」ことに的を絞ってインタビューを行った。その結果,どのような事柄に情緒を感じるかについては,「具体的でストーリーがある,全体の物語として把握できる」ことに肯定的回答が多かった。 このインタビューによる質的な調査の結果は,先の質問紙による量的調査の分析から見えてきたことと重複する部分が多く,女子生徒に物理に対する興味・関心をもってもらうための方向性がより具体的に示されていると考える。次期学習指導要領においては,教育の基本的な考え方が,コンテンツ(内容)ベースからコンピテンシー(資質・能力)ベースに変わる。この研究から見えてきた,女子を意識した新しい物理の学習内容は,「教科の本質に即した学び」であるとともに,「日常の生活,世界が変わって見えるようになる学び」であるオーセンティック(真正)な学びになると考える。以上の研究結果を,『女性のための「物理教科書」研究』(吉田信也・藤野智美,敬文舎)として発刊した。
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