小学校,中学校,高等学校の理科と数学科の学習内容を,教科書を中心に精査するとともに,理科と数学科が関連する学習内容について特定する作業を行った。こうした内容については,小・中・高等学校の理科と数学科の先生方で構成する勉強会を通じて,理科と数学ではどのように指導しているのか,互いに指導 内容を伝え合い,生徒の立場に立った場合には,理科と数学科の教員としてどのような支援が可能なのかを検討してきた。例えば物理で学習する単振り子では,等速円運動の物体の速さ,加速度,物体にかかる力などを利用したり,数学Ⅲで学ぶ三角関数の極限を活用するなどすることによって,ようやく単振り子の等時性の公式を導くことができる。等時性の公式を導くために活用される一つ一つの知識や概念が十分に理解できなければ,学習者は等時性の公式の意味も的確に把握できない。しかしながら,理科と数学科の教員がこの学習内容について互いに十分に理解できていない現状がある。本研究では,こうした現状が,学習者の理解を円滑に支援しきれていない要因の1つであると見出すことができた。昨年度までの研究によって,高校2年生あたりまでは理科と数学科は別の教科で関連性を感じていないことが判明したが,彼らを指導する教員としては相互の関連や活用した知識の背景まで指導することができるようになっていることが重要であることも明らかにできた。 ほぼ毎月実施することができた勉強会に参加されている理科と数学科の先生方は,理科と数学の隣接する学習内容について,互いに理解する必要性を実感するようになってきたことは大きな成果である。平成30年度も,実践研究として日本科学教育学会で口頭発表したほか,本研究の成果を鳴門教育大学授業実践研究第18号や鳴門教育大学学校教育研究紀要にて論文としてまとめることもできた。その他,関連する研究の発表も行った。
|