研究課題/領域番号 |
15K00926
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
吉冨 賢太郎 大阪府立大学, 高等教育推進機構, 准教授 (10305609)
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研究分担者 |
川添 充 大阪府立大学, 高等教育推進機構, 教授 (10295735)
高橋 哲也 大阪府立大学, 高等教育推進機構, 教授 (20212011)
江見 圭司 京都情報大学院大学, 応用情報学研究科, 准教授 (10339989)
亀田 真澄 山陽小野田市立山口東京理科大学, 共通教育センター, 准教授 (10194995)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 反転授業 / eラーニング / ブレンディッドラーニング / 教材開発 / 数学教育 |
研究実績の概要 |
2015年度前期は, 主として後期使用予定であった履修確認用問題の準備と本課題採択前年度に本学工学域向けに試作利用した解説動画の検証を行った. 日本数学教育学会においてこの利用事例について, アンケート結果とともに紹介し, 問題点の検証と今後の予定について発表した. また, 動画作成について, 香川大学において小研究会に参加し, 動画作成のノウハウやポイントについて意見交換と情報収集を行った. また, 総合的な教材開発の観点から本学システムであるMath On Webの教材との連携を視野にいれた教材構成方法も検討した. 後期においては, 現代システム学域知識情報学類のクラスを対象とする線形代数授業において反転授業に取り組んだ. 上述の線形代数解説動画の改良版の開発を授業の予習に間に合うように準備ができたので, 反転授業を試みることができた. 動画改良のポイントは前年度のスライドの内容を, 学習目標のさらなる細分化により, より短時間にまとめたことである. また, 文字の大きさをスマートフォンでの視聴を意識して修正し, 細分化した学習目標についてより簡潔でわかりやすい動画を目標にすべて再録した. また, 反転授業における評価方法として, 講義支援システム(Moodle)の小テスト機能を用いるため, 多肢選択問題を34, CASを用いる問題タイプであるSTACKの問題を76作成し, 利用した. さらに, 授業内で4回のアンケートをとり, その内1回は大規模に行い, 反転授業そのものの改良点について非常に参考になるものとなった. 最初の1回は動画の品質についての問題点を改善するのに利用し, 音声に関する品質の改良を行うことができた. また, 解説内容としては, 数値例などの具体的事例解説の重要性が明確化した. このようにアンケートに基づく教材活用の分析と改良を行うことができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は主として1回生の線形代数や微積分学の反転授業の教材開発を目的としている. 授業の教材開発を行うためには, 通常, 前期の内容からの教材を開発していくのが本来望ましいのは言うまでもない. さらに, 場合によっては前期以前, すなわち大学入学以前の範囲についてその基礎となる項目のリメディアルに相当する部分も本来はカバーできるように開発することが必要である. また, 反転授業はある程度の学力差は事前学習によって埋めることができ, スタートラインに差があるクラスにおいて効果を発揮するというのが一般論であるが, 代表者が担当したクラスは, 後期からの実施であり, しかも通常受け持つ学域の学生とは異なる学域の学生で, さらに前期担当者の授業での教授内容についての情報が著しく不足・さらには2回生以上対象の授業で再履修生も相当割合含まれるクラスでの授業開発となった. 以上のように教育研究という性質上, 環境面で著しく不利な状況での開発となったため, 動画自体の開発はほぼ授業に間に合う形でできたものの, 教育効果的な見地からの検証を行いながらの授業進行が不十分で, 教材開発としての効果が非常に検証し難い状況となった. 授業途中で動画や評価問題の難易度調整に手間どり, 確認教材の見直しや実際の対面授業設計に全く手が回らなかったのである. また, 加えて微積分学の動画教材の作成にはまだ全く着手できておらず, これから, 各教科書の調査と学習目標の細目の策定を進めながら, スライド開発を始めようとする段階である. 以上, 線形代数においては, 教材の基礎がほぼできた段階, 微積分学においてはまだ準備段階ということで, 本研究の開発は全体としてやや遅れていると考えている.
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今後の研究の推進方策 |
2016年度においても線形代数については, 前期の担当はなく後期のみである. また, 担当クラスはまた今までとは異なる自然科学類担当となる. 前年度の反省を踏まえて, 前期の内容に相当する動画を順次作成していく. 学内分担者には, 後期に担当する授業の前期担当者はいないため, 動画利用の協力を要請することはできないが, 協力者がいれば試用してもらう. 内容としては後期における前期履修内容の確認を目的とする教材として活用できることを目指す. 作成した動画は随時YouTubeにオープンで公開し, 一般利用可となるようにする. 前期の内容は比較的数値例や具体的な内容が中心であるため, タブレットとスタイラスペンを用いた例題解説動画も含めて開発していく. この際, 微積分学で担当しているクラス向けの解説も合わせて開発し, 微積分学の教材の作成も可能な限り並行して進めていく. 紙媒体による課題や授業支援システムを用いた問題開発も随時行い, 解説動画と連携した教材を開発していく予定である. 開発した紙媒体の問題はPDFとして, Moodle の問題は XML として随時Web上でまとめて掲載する. 特にMoodleの問題はmathbank.jp に公開していく. また, 前年度において問題であったスマートフォンの利用に関する環境面の問題について, 学内ネットワーク管理者と協議し, 利用環境の整備を検討していく. 特に授業内においてのスマートフォン利用によるアンケートや理解度をチェックしながらの解説を行う可能性も視野にいれて, 60台程度は接続可能な無線環境の構築を行う. また, 教材配布に特化してUSBメモリやDVDによる配布方法も検討していく. 後期授業期間開始までに, 総合的な教材の使い勝手を検証するため, 院生による学生モニタや実機検証などを含め, 支障がないかの検討を進める予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
教材配布用のUSBメモリーなどの購入を目的に残金があったが, 次年度に再検討することとしたため残額が生じた.
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次年度使用額の使用計画 |
教材配布用USBメモリーもしくは配布用WiFiサーバーの設置費用として使用する予定である.
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