本研究では,学生とプロジェクトチームを組み,PCを用いてバスケットボールの試合データを効率よく収集し,多様な解析を行うことを目的としたバスケットボールデータ管理システムの開発を行ってきた。開発の主なコンセプトは,広く競技者への普及を図るために無料で手軽に利用できること,最低限必要な利便性を有すること,工学・数学的な観点からグラフ理論を応用して選手の活躍度の定量化を図ること,及び工学教育の観点から学生の実践的システム開発力を育成・検証することなどである。 特に最終年度は,データのより有効活用を図るために,その解析表示方法について再検討し,試合中のアクションを時系列で振り返る機能を実装した。画面上を移動可能なコントローラによって,試合の進行に即して,アクションリスト,ボックススコア,シュート位置プロット,得点推移グラフなどへの多様な時系列解析が可能であり,更にグラフ理論を応用した固有ベクトル中心性によって選手の活躍度を定量的にグラフ化して評価できるようにした点が特長的である。いずれの解析結果も一つのフォーム上で一括して確認できるために,チームや選手の好不調を総合的かつ視覚的に捉えることができ,有用性の高いものが実現できたと評価している。 システム開発の最終段階においては,製品としてユーザの利用に耐え得る信頼性,操作性,機能性の徹底的な品質検査が不可欠である。学生にとっては,本システム開発を通じて,開発者側がプロトタイプとして動作できたことに単に満足するのではなく,ユーザの立場からシステムのPDCAを徹底的に行い,利便性を追求することの重要性を実践的に学修できたことは有益なものとなった。 補助事業期間終了後も,システムの完成度のより向上を図るとともに,Webページによってシステムの紹介やシステム自体をダウンロードして利用できるようにするなど,一般ユーザへの広報活動を継続している。
|