研究課題/領域番号 |
15K00946
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研究機関 | 沼津工業高等専門学校 |
研究代表者 |
竹口 昌之 沼津工業高等専門学校, 物質工学科, 教授 (30321441)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 実践教育 / 地域志向 / 廃棄物の有効利用 / 融合複合教育 / 学際的教育 / 技術者教育 / バイオエタノール |
研究実績の概要 |
本申請課題では,学生が地域社会の問題点を明らかにし,専門が異なる教職員と学生が連携して地域社会の問題の解決に向けて取り組む実践的な教育プログラムを構築することを目指している.特に,本申請課題では研究代表者が得意とする廃棄物問題に焦点を当て,地域で問題となっている廃棄バイオマスの問題について取り組んだ. 本年度は地域社会が抱える廃棄バイオマスとして放置竹林を取り上げ,沼津高専第2学年の4チームが連携し,放置竹林の活用法について探った.第1グループでは,地域に未利用資源を探索し,放置竹林が問題となっていることを明らかにした.タケの有効利用を目的に,タケからバイオエタノールを合成するプロセスと検討した.第2,3グループでは第1グループが合成したエタノールを濃縮する蒸留装置について,エネルギー効率を高める検討を行なった.第4グループでは蒸留残渣の活用を検討した.本活動を通して,異なる専門分野の学生が地域社会の抱える環境問題に目を向け,連携して取り組み,幅広い知識・経験・マネージメント力を修得することができたと考える.本研究の取組みについては参加学生による学外での発表を2件行っている. また,昨年度に引き続き地域社会が抱える廃棄バイオマスとして製菓工場から排出される廃シロップについて,その活用方法を卒業研究にて検討した.その結果,廃シロップ中の糖質をエタノールおよび酵母として回収するプロセスを構築した.エタノールは工業原料及び燃料として利用可能であり,酵母は栄養補助食品として利用可能であることを示した.また,本研究で合成したエタノールを低学年の学生実験の試薬として利用し,参加学生に未利用資源の活用事例として高い教育効果を得ることが出来た.本研究成果については学会発表を行なうとともに,現在,関連学会に論文投稿中である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度に継続し,異なる専門分野の学生と教員が地域社会の環境エネルギー問題の解決に向けて,問題把握,問題点の抽出および廃棄バイオマス利用プロセスの提案を行なった.平成28年度の計画事項(4項目)に基づき,現在までの進捗状況を報告する. 廃棄バイオマスからのエタノール生産:研究代表者の指導のもと卒業研究にて地元の製菓工場から排出される廃シロップのエタノール発酵を行なった.その結果,廃シロップ中糖質の90%がエタノールに変換できる条件を明らかにした.また,エタノール発酵により生成した酵母が栄養補助食品として利用可能であることを示した. エタノール回収装置の製作:計測工学を専門とする教員(連携研究者)と伝熱工学を専門とする教員(連携研究者)ともに上記実験により生成したエタノールの蒸留回収を行なった.本年度は学生に対して蒸留装置を教材に蒸留操作の省エネルギー化について検討を行なった.本研究成果は担当学生が学術研究発表会にて発表した. エタノールの有効利用:廃シロップから作成したエタノールを低学年の学生実験の試薬として利用した.具体的には有機合成反応の原料として,また,ガソリンエンジン燃焼実験における燃料として活用した.廃棄物から作成したエタノールを利用したことで,持続可能なものづくりの必要性を理解させることができた. アルコール発酵残渣の有効利用:本年度,アルコール発酵残渣を水耕栽培の液肥と利用する検討を開始した.現在,本実験は進行中である.平成29年度は植物学を専門とする教員(連携研究者)と連携しながら検討する. 今年度の取り組みを通して,学生は地域社会の問題を把握し,解決するために自分が学んでいる専門以外の技能が必要であることを学びつつある.また,学生および教員ともに知識と技能を集約し,実行可能な計画を立案するマネージメント能力と的確なコミュニケーション能力が必要であることを学んだ.
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今後の研究の推進方策 |
初年度の研究により,学生と教員の連携のもと地域社会が問題とする廃棄バイオマスの現状把握ができた.本年度の研究により,放置竹林から生じるタケと製菓工場から廃棄される廃シロップを使用したエタノール合成とその活用法について教員の助言により学生が示すことができた.最終年度である平成29年度は製菓工場の廃シロップを実プラントにて活用するプロセスフローを学生に提案させることを目的とする.具体的には,(1)卒業研究にて廃シロップ処理の物質収支を考慮し,最適な処理プロセスを提案させる.加えて,継続して地域廃棄物を探索し,その活用法についても提案をさせる.また,(2)専門分野が異なる学生(高専専攻科生)がチームとなり,これまでに開発してきた廃シロップ処理工程について概観し,その上で,プロセスの最適化を図る実験を行なう.特に(2)については,計測工学を専門とする教員(連携研究者)と生物工学を専門とする教員(研究代表者)がチームに加わり,学生の理解を深めるようアドバイスを行なう.これら検討は連携する学生と教員が,各専門の域をこえて討論し,地域社会が求める真の技術を確立できるようにする. 以上,平成29年度は3年間の成果を総括し,異なる専門分野の学生と教員が地域の環境エネルギー問題の解決に向けて連携してプロセス構築に携わり,その過程で実践的な技術者に必要な知識・技能およびマネージメント能力を習得する教育システムを構築する. なお,本申請課題により得られた成果は広く社会・国民に発信するために,教育関連の学会等での発表を視野に研究の取りまとめを行なう.
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次年度使用額が生じた理由 |
学会発表について,開催場所の変更に伴い使用計画と使用額に差額が生じている.加えて,基本的には計画通りの物品購入を行なったが,納入業者および納入金額の変更に伴い使用額に変更が生じている.
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次年度使用額の使用計画 |
研究計画書通りに実施しているが,その後の研究成果により使用する実験器具が変更になる予定である.そのため,上記差額を使用したいと考えている.
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