地域の廃棄物問題の解決に向けて異なる専門分野の学生と教員が連携して処理プロセス構築に携わり,必要な知識・技能・マネージメント力を修得する社会実装教育の実施を目指した.具体的には,(1)地域の眠っている未利用資源の探索,(2)廃棄バイオマスからのエタノール生産,(3)エタノール回収装置の製作について実施した. (1)については低学年におけるPBL型講義にて行った.その結果,静岡県東部地区には資源となりうる廃棄バイオマス(製菓工場からの廃シロップ)があること,廃棄物を活用するための大きな問題点は輸送であることを明らかにした.上記(1)の結果を踏まえ,5年生が卒業研究にて,(2)廃棄バイオマスからのエタノール生産に取り組んだ.低学年の学生が見出した地域の廃棄物問題に対して,専門科目を既に修得した高学年の学生が解決策を探ることになった.エタノール発酵の条件を検討し,製菓工場の廃シロップより94vol%エタノールを得ることができた.当初,エタノールは燃料として利用することを考えていたが,担当した5年生の学生より製菓工場の殺菌に利用する提案がなされ,その効果についても検討した.本卒業研究を通して課題解決能力の養成を期待したが,それ以上の教育効果が得られた. 上記(2)の結果より得られたエタノールを回収する装置設計を専門学科の異なる2名学生が取り組み,プロジェクトを進める上でのコミュニケーション能力の必要性を理解した.最終年度は高専での専門教育を修得した物質工学科学と専攻科生に,対応する廃棄物問題の解決に向けたプロセスの最適化,バイオエタノール製造以外も視野に入れた最適な解決方法の提案を考える卒業研究および専攻科実験を行なった. 今後は本申請で得られた成果であるカリキュラムをPDCAサイクルにより改善していく.以上,本教育研究では社会実装教育の実施を目指し,教員間連携の可能性を示した.
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