研究は,以下の4項目を目標とした。それぞれの要点を報告する。 1.エンジニアリング・デザイン・プロセスを理解し,クライアント要求からデザインを完成する開発力を向上させる教科書の作成:『エンジニアリング・デザインの教科書(平凡社)』(2018)を上梓した。教科書は読者に対し,日本メーカーにおけるデザイン・プロセスを説明するとともに,デザインにはクライアントを意識しなければならないこと,意思決定を進めるために必要な情報とその扱い方,目的と手段を分ける考え方,機能により製品案を導く方法,品質を高めるための方法,失敗を回避することなどを論述する。松江高専専攻科1年(学部3年レベル)にて,前後期各2単位の講義および演習を実施しながら教科書は内容を洗練した。また,教科内容の一部は工学教育(2015)にても発表した。 2.上流工程であるクライアント要求の把握~製品プランニングを体験できる演習教材の開発:ユーザシナリオ,顧客価値連鎖分析,価値・機能・構造マップを用いた製品プラン演習を試みている。クライアントが潜在的に求めるものを明らかにして,それに応える製品案を作成するものである。演習内容は工学教育誌に投稿準備中である。 3.課題,演習の進め方,報告書作成,評価方法までの一連の教科資料を活用できるウェブサイトの作成:松江高専専攻科ウェブサイトにて,専攻科での実施演習について公開している。また,演習内容,知識教授科目との関連,成果については工学教育(2016)にて発表した。 4.英語発信力向上のための工学系オンライン・コーパスおよび教材の開発:システムの開発に着手し,ISATE 2015にて発表したが,実用的なシステムとするだけの用例採録ができていないため成果を上げるには至っていない。
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