研究課題/領域番号 |
15K00957
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研究機関 | 北海道教育大学 |
研究代表者 |
野村 卓 北海道教育大学, 教育学部, 准教授 (00507171)
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研究分担者 |
元木 理寿 常磐大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (10449324)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | スーパー食育 / 科学的味覚試験法 / フード・マイレージ / 味覚の共有・共感 / 味覚の継承 / 栽培学習の理数教科連結 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、平成26年度から実施されているスーパー食育スクール(SSS)を発展・普及させていくために、これを担うスーパー食育指導者養成(SSTT)のための基礎的研究を行うことである。これまで食育は栄養教諭の配置状況や指導体制に差があり、成果の科学的検証に課題があるとされてきた。これを平成26年度文部科学省では栄養教諭を中心としたSSSの展開を始めた。しかし、重要なことは栄養教諭の実践を支える一般教員の食育実践であり、ここでは科学的思考を伸ばし、地域・家庭・学校の生活を連結・創造できる指導者養成に関する検討が求められる。これら科学的な思考の助長を土台に“科学的味覚教育”、“栽培学習(生物育成)の理数連結教材開発”、“社会的味覚教育(地域伝承教育)”の連結・統合した基礎的研究を行うために本年度は、初年度に当たる。実施計画に基づき、3つのアプローチから検討を進めた。①家庭科教育アプローチ、②地域伝承教育アプローチ、③技術科教育アプローチである。 平成27年度は、北海道釧路実践、北海道浜中実践、北海道浦幌実践、鹿児島県沖永良部実践、茨城県水戸実践を、上記3つのアプローチに配置し、検討を進めた。具体的には①家庭科教育アプローチにおいて、科学的味覚試験法の検討、フード・マイレージ教材開発、味覚共感教育法の検討を実施し、②地域伝承教育アプローチにおいて、味覚共有法の検討、味覚継承法の検討、フード・システムによる商品開発を実施し、③技術科教育アプローチにおいて、栽培学習の理数教科連結教材開発を実施した。 研究成果として学会発表8本、学術論文5本(刊行予定2本含む)が挙げられ、計画に即した成果が挙げられているものと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、計画に設定した3つのアプローチを同時進行させる初年度の位置付けである。実践研究を実施するのは北海道釧路実践、北海道浜中実践、北海道浦幌実践、鹿児島県沖永良部実践、茨城県水戸実践の5つである。 まず、①家庭科教育アプローチにおいて、科学的味覚試験法の検討として、水や米の食味試験を教員や学生に対して実施し、多様な味覚評価になることを実感させた。フード・マイレージ教材開発では、小学生に対して価格志向と地産地消志向で二酸化炭素排出量を具体的に算出できる教材開発を行い、社会科の授業で実践した。味覚共感教育法は、家庭の味(おふくろの味)を地域の味として共有・共感させる方法の検討を行った。 ②地域伝承教育アプローチにおいて、科学的味覚試験法や味覚共感教育を元に、ワークショップでの味覚共有法の検討を行った。味覚継承法の検討では、生産調整前の水稲を復活し、高齢者と青少年の味覚を共有させ、継承させるために、水稲栽培を実践地の老人会に委託し、栽培することになった。フード・システムによる商品開発としてはPB商品として梅酒の開発を行った。 ③技術科教育アプローチにおいて、栽培学習の理数教科連結教材開発を行うために、道東における水稲、じゃがいも、金時豆、スイートコーン、ビートの比較栽培法を検討し、小学生が実践できる手法を開発した。 これらを研究成果として学会発表8本、学術論文5本(刊行予定2本含む)を公表した。これら手法の汎用化を図るために、平成28年度も同じ試験を実施しながら検証を進める状況になっている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は平成27年度と平成28年度と継続して同様の試験を実施しながら汎用化と一般化の検証を進めることに特徴がある。特に栽培学習などは、気候風土の変動を念頭に置いて、平年値としてのデータが集積される必要があり、単年度の成果だけで判断できない。 よって、実施計画どおり、平成28年度も3つのアプローチからの検討を進める。①家庭科教育アプローチ、②地域伝承教育アプローチ、③技術科教育アプローチである。実践地も北海道釧路実践、北海道浜中実践、北海道浦幌実践、鹿児島県沖永良部実践、茨城県水戸実践とし、検証を進める。具体的には①家庭科教育アプローチにおいて、科学的味覚試験法の検討、フード・マイレージ教材開発、味覚共感教育法の検討を実施し、②地域伝承教育アプローチにおいて、味覚共有法の検討、味覚継承法の検討、フード・システムによる商品開発を実施し、③技術科教育アプローチにおいて、栽培学習の理数教科連結教材開発を実施する。 特に、フード・マイレージ教材開発は、北海道浜中だけでなく、北海道浦幌、鹿児島県沖永良部でも導入について検討を進める。味覚継承法については、生産調整前の米と現在の米との食味試験を実施する。栽培学習では水稲、じゃがいも、ビート、金時豆の比較栽培法を検討し、平成27年度の対象学年飲みならず、他の学年での導入可能性を検討する。これらは最終年度の平成29年度を念頭において、教員が食育実践を進める上で、求められる資質、能力の整理についても目処を立てていくことが求められることから、学生を中心に自己評価に注目して成果が挙げられるように取り組む予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は、茨城の研究分担者の研究発表等が次年度報告にずれ込んだことから旅費を中心に生じたものである。物品費も、これに連動して生じたものである。
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次年度使用額の使用計画 |
茨城の研究分担者により、次年度報告を実施し、旅費等を支出する予定である。
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